下腹太りに悩む人は座りすぎの悪影響を知らない

特に加齢によって、ぽっこりとお腹が出てしまうことに悩んでいる人は男女問わず少なくありません(写真:つむぎ/PIXTA)
男女問わず、やせたい部分の上位に入り続ける下腹。
ダイエット系のウェブ記事や雑誌の特集でも最も人気があり、痩身マッサージのメニューにも入ってくる部位ですが、じつは辛い筋トレや費用のかさむマッサージをしなくても、下腹を凹ませる有効な方法はあるようです。
YouTubeチャンネル登録者数10万人で、半年先まで予約が取れない整体師の永井峻氏が上梓した『不調が消えてやせる うるおう体のつくりかた』から一部抜粋、再編集してお届けします。

悩む人が多い「下腹やせ」に効果があるのは?

下腹が出ているという悩みは、来院された方々からも「何をしても下腹だけは落ちない」「ぽっこり出ているのが嫌」など、頻繁に耳にします。多くの人が気にしている部位だけに、下腹やせを実現するための方法として、筋トレやマッサージなど多種多様なものが紹介されるようになりました。その多くに目を通し実際に試してきましたが、私が10万件の施術や健康指導をするなかで、いちばん下腹やせに効果があったのは、体の深部で滞ったリンパのケアでした。

「リンパ?」と思われたかもしれません。

リンパと申し上げると多くの方は「何をするものかよくわからない」と仰り、健康情報に興味のある方は「体の老廃物を回収する体液」「マッサージで流すもの」などという認識があるようです。

じつはリンパには「浅いリンパ」と「深部リンパ」があり、マッサージなどで一般にリンパと呼んでいるのは皮膚のすぐ下を中心にめぐる「浅いリンパ」です。下腹やせに高い効果を示したのは、体の奥深くにある筋肉や臓器をめぐる「深部リンパ」のケアでした。

リンパの流れる深さについて触れる前に、まずリンパがどんなものかをご説明しましょう。

リンパのおもな役割は、数十兆あるとされる全身の細胞に必要なものを届ける「物流」です。血液も物流をこなしていますが、両者には違いがあります。血液が血管という高速道路で大量の荷物をすばやく運ぶ「大型トラック」なら、リンパは1つひとつの荷物をていねいに各家庭まで届ける「配達員」です。

リンパのめぐりがいいと酸素や栄養素、免疫細胞が体のすみずみまで行き渡るため、体のどの部分でも回復力や免疫力が高まります。しかもリンパは、配達するだけでなく体内に生じたゴミ、いわゆる老廃物まで持ち去ってくれるのです。

もしリンパの流れが悪くなると、酸素も栄養素も不足して老廃物が回収されなくなります。これは食料も水もないゴミだらけの部屋に閉じ込められたようなもの。細胞はどんどん元気を失っていきますし、治るものも治りません。この状態から脱する唯一の方法が、体の奥深くを流れるリンパのケアなのです。

リンパは血液の3倍もの量がある

じつは私たちの体内から老廃物を出す方法は、体液に溶かす以外ありません。その働きの最大の担い手がリンパです。

リンパは血液の3倍もの量があります。極小の細胞1つひとつに、必要とするものを届けてゴミ(老廃物)を回収する「流通網」をつくるには、量も必要なのです。リンパがなければ細胞は死滅しますし、もちろん人は生きていられません。

そしてリンパの成分は大きく変化します。体内にウイルスや細菌などが侵入すると免疫細胞が大量に供給されますし、体内に生じたゴミを回収するとリンパはドロドロに。二酸化炭素などごく小さなゴミをメインに回収する血液と違い、リンパはたんぱく質や脂肪、細菌やウイルス、傷ついた細胞などといった大きなゴミを大量に回収しています。だから、つねにサラサラではいられないわけです。このリンパのゴミ回収能力は、最大で血液の20倍にまで達します。