政府はビデオ通話の体制を拡充するなどの対策を強化していると話しているが、健康確認と位置情報の確認の両方に応答なしの場合が1日約100人に上っているとのことだ。五輪関係で入国する外国人に対しては、組織委員会などと健康情報を共有するアプリ「統合型健康情報等管理システム」(通称オリパラアプリ)を導入するとのことだが、GPS管理は含まれていないことで、どこまでの追跡が可能となるのか、また通常の入国者同様に位置情報の確認も毎日できるのかについても議論が必要だろう。現状のわずかな入国者に対しても完璧でないのに、約10万人の入国者に対応するのは至難の業だ。
東京オリンピックの開幕が近づくにつれ、大会関係者が準備のために来日するケースも出てきているだろう。逆算すると現時点で特別入国ルールが最終確定していないこと自体が問題だ。
6月にはオーストラリアの女子ソフトボール代表が事前キャンプ地の群馬県太田市に入るという報道が25日にTBSテレビで報じられたが、組織委員会のルールブックである「プレイブック」の最終版が発表される前に入国するのであれば、14日間の待機が必要だろう。見切り発車と言ってもいい。ルールを国民に示す前のこの動きは、国民の不安を煽ることにもなりかねない。先行来日して14日間を過ぎた場合、選手以外の入国者は自由に日本国内を動けるが、選手の14日後以降の行動ルールについても不透明だ。
オリンピックを予定通りに開催できても混乱が懸念される。日本がこれまで世界にアピールしてきた「おもてなし」ができないどころか、逆にフラストレーション(不満)が溜まるオリンピック・パラリンピックになってしまうかもしれない。
そして日本国民が多くの外国人の入国に対して不安を感じないように、行動制限の中身を周知することはもちろん、そもそも違反ができないような枠組みづくりが求められるだろう。