海外から訪れる東京五輪選手・大会関係者・メディア関係者のケースはどうか。
選手の入国後の活動場所は選手村や事前合宿地などの宿泊施設、練習場、競技会場などに限定される。選手は入国当日から練習も可能で、ファイザー社から選手全員へのワクチン提供が決まり、ルールを破った段階で競技に出場できないペナルティーも科される。
ワクチン接種が義務にはなっていない大会関係者やメディア関係者について、現時点で報道されている特別入国ルールでは、最初の3日間の隔離期間後、活動計画書を提出することで、検疫所長が指定する場所での14日間の待機なく日本国内での行動が可能となる運用が予定されている。PCR検査も選手は毎日、それ以外の関係者も行動次第でPCR検査を定期的に行う。
それでも、入国から14日間は観光、ショッピング、レストランやバーなどでの食事も組織委員会が認めた場所以外では禁止で、移動手段も大会専用車両のみとし、原則として公共交通機関の利用は不可(遠隔地で開催される競技においては条件付きで鉄道・飛行機利用が可能)となる。
菅義偉首相は5月14日の記者会見で選手以外の大会関係者については「一般国民と違う動線で行動してもらう。特定のホテルを指定し、国民に接触することがないよう、今しっかり対応している途中だと報告を受けている」と話している。
メディア関係者の場合、宿泊施設、練習場、競技会場、東京ビックサイト内に設置されるIBC(国際放送センター)・MPC(メインプレスセンター)などに活動場所は限定される。ただ、全員をチェックできる監視要員を確保できるのだろうか。活動計画書を破って行動する入国者が続発する可能性は十分にある。
厳しい感染状況が続く今、活動範囲が広いメディア関係者は、開会式の14日以上前に入国させ、通常の入国者同様に14日間の待機をした場合のみ取材を許可する運用にできないのかと強く疑問に思う。最小限の人数を徹底させる意味で入国者数を減らす抑止力にもなると考える。
5月17日に加藤勝信官房長官が記者会見で行動制限の遵守などを記載した誓約書の提出をメディア関係者に求める方針を示し、違反した場合には強制退去手続きを取る可能性を示唆した。丸川珠代五輪担当大臣も「指定されていない行動範囲を管理されない状況で、うろうろするということは絶対にない状況にしていく」と国会で答弁している。
取材禁止や強制送還だけでなく、高額の罰金を科すなど、ルール違反の場合の処罰を厳格にして抑止力を高めておかなければならないだろう。
しかし、そもそもこれまでの水際対策が万全ではなかったのが気にかかる。イギリス株もインド株も水際で食い止められなかったからこそ、今の市中感染を招いてしまっているのだ。
最近になって位置情報が把握できるスマートフォンの所持および指定アプリのインストールなどを条件にするなどの改善は見られる。それでも厳格なルールでの行動違反で身柄拘束をするなどの罰則を設けている諸外国に比べると日本は緩いと言わざるをえない状況が現在も続いている。違反者の氏名公表をすると政府は言っているが、現状至っていない。
5月23日のフジテレビ「日曜報道THE PRIME」では、5月9日~15日の平均値で厚生労働省などの調べで健康状態の毎日確認に応じていない人が22.3%、位置情報の毎日確認に応じていない人が29.4%(両項目ともに全対象者は2万2589人)と報じている。日本国内ではアプリの不具合も一部で出ており、運用面での問題も出ている。昨年の夏から水際対策の徹底が叫ばれていたなかで、約1年経ってこの状況というのはザル状態と言われるのも当然だろう。