「ザルな水際対策」五輪で日本人が最も心配する訳

そもそもこれまで海外からの変異株の侵入をやすやすと許してしまっている日本が世界中から人を招いて本当に大丈夫なのかという心配が募る(写真は成田空港の到着ロビー、2021年5月22日、筆者撮影)

7月23日に予定されている東京オリンピックの開幕まで2カ月を切った。まだ最終的に五輪自体が実施されるのか、それとも中止・延期となるのかは判然とせず、さまざまな可能性が残っている。

仮に東京五輪が予定通りに開催されることになったとすれば、日本国民にとっての大きな心配事が持ち上がる。無観客、あるいは観客をある程度絞ったとしても、選手やスタッフなどの大会関係者、メディア関係者などだけでも数万人単位の少なくない外国人が世界中から押し寄せること。それによって、新型コロナウイルス変異株の侵入を許してしまうことだ。

イギリス株、インド株あるいは新たな変異株が入るかも

何より懸念なのは、日本政府や関係者がその点を理解したうえで、空港などにおける水際対策を徹底し、入国後の行動制限ルールをしっかりと決めて厳密・厳格に運用できるかどうか。これに失敗したら最悪の場合、今、日本国内で広がっているとされるイギリス株、一部でクラスターも確認されて今後広がりかねないインド株はもちろん、それらとは別の変異株などの市中感染を招くおそれすらある。

海外から入国するオリンピック・パラリンピック関連における大会関係者の入国後のルールの詳細が徐々に明らかになっている。6月には組織委員会から発表される「プレイブック」で最終的なルールが確定する見込みだ。

これまで選手1.5万人、選手以外の大会関係者やメディア関係者で約9万人の入国が想定されてきたが、5月21日の組織委員会の記者会見で橋本聖子会長は大会関係者が延期前の約18万人から約7万8000人まで減る見通し(オリンピックで5万9000人、パラリンピックで1万9000人)を明らかにした。

とはいえ、コロナ禍で最も海外からの入国者が多かったのが昨年12月の5万8673人だった。コロナ後の外国人入国者は、世界のほぼすべての国からの入国が制限された昨年4月以降激減。観光での入国は認められないが、日本での長期ビザ保有の外国人の再入国、永住権を持っている外国人、配偶者が日本人の場合、さらにはスポーツ選手など特別な入国事情がある場合などに限って入国が認められている。

東京五輪が開かれれば、前後の短期間にコロナ禍において相対的に少なくない外国人が日本へと新たにやってくる。もちろん彼らにコロナを日本に持ち込む意思はない。とはいえ、無症状あるいは感染の潜伏期間などに意図せずに運んできてしまう可能性は否定できない。

となると、選手を含む大会関係者やメディア関係者に対して水際対策を徹底し、そして入国後の行動制限を厳格にする必要がある。

これを阻止できずに日本国民の感染が拡大してしまったら、国民の安全を日本政府が守られなかったことになり、政府の責任が問われることになる。最近ではプロ野球の広島東洋カープで、5月23日現在、チーム内で12人が陽性判定を受けるなど、感染者の接触による感染力が高いことを物語っている。

現状、一般的に海外から日本に入国する際のルールを整理しておこう。

日本人の帰国および再入国の外国人などを除き、特別な事情がない限りは外国人の入国は認められていない。入国可能な場合でも現地出発前に事前にPCR検査の陰性証明書の取得が必要であるとともに、羽田空港や成田空港などに到着後にPCR検査を実施する。

現在、変異株が多く発生している日本政府が指定した国(国によっては州で指定されている場合もある)からの入国においては、3日間もしくは6日間(インドなどからの入国は28日からは10日間)は空港周辺ホテルに強制的に滞在するルールで(加えて入国から14日間は検疫所長が指定する場所で待機)、それ以外の国からの入国では空港でのPCR検査で陰性が確認されれば、ホテル隔離なしに検疫所長が指定する場所(自宅、社宅、親戚・友人の家、マンスリーマンション、自身で予約したホテルなど)で健康観察のために14日間待機する必要がある。