東京女子医大の現役医師が訴える深刻な労働実態

この影響で、新生児科の教授が月8回の当直をしなければ維持できない事態になっている。新生児科のウェブサイトには、すでに退職した医師たちの名前が掲載されたままだ。

付属病院血液内科の外来診療担当表がすべて空欄に

付属病院の八千代医療センター(千葉・八千代市)では、4月から血液内科の外来診療担当表から、医師の名前が消えてすべて空欄になった。

八千代医療センター(千葉・八千代市)の血液内科は診療を大幅に縮小しており、医師の外来担当表は空欄のままだ(筆者撮影)

血液内科とは、急性骨髄性白血病などの血液がんや再生不良性貧血などの治療を行う専門性が高い診療科の1つ。以前は4人の医師が月曜から金曜までの外来をカバーしていたが、現在は常勤の医師がいなくなった。

関係者によると、新規の患者には対応できなくなり、これまで通院していた患者を1人の医師がフォローしているが、それも6月末までの勤務予定だという。この医師が去ると、血液内科は実質的に閉鎖状態となるだろう。

『常勤スタッフが不在のため診療を縮小しており、新規の紹介は受け付けておりません』

これは、同センター・呼吸器内科の外来診療担当表に付記された一文である。

5人の医師が外来から入院治療まで対応していたが、4月からは医師2人になり、外来だけになった。新規患者の受け入れや入院治療は中止されている。呼吸器内科は、肺がんなどの重篤な患者の治療も担当する重要な診療科。入院治療ができない状況は、大学病院として頼りない。

東京女子医大は、「3月の退職者数は、ほぼ例年通り」と主張しているが、これまで具体的な数字は示していない。

本院の中には、医師数が大幅に減少した診療科がある一方、変動がほとんどないところや逆に医師が増えた診療科もあるという。

医師数についての回答

そこで、5月初旬、東京女子医大・広報室に対して医師数などに関する質問状を改めて送付した。取材拒否だった前回とは違い、回答書が返ってきた。

3つの付属病院について、今年4月1日時点で在籍している医師数を尋ねたところ、東京女子医大からは、昨年のデータも合わせて回答があった。医師数は常勤医のみで、非常勤や出向・派遣は含まないことを確認している。

<回答 付属病院の医師数>
2020年4月1日 本院890 東医療269 八千代医療219  合計1,378 
2021年4月1日 本院889 東医療246 八千代医療210  合計1,345 

昨年から今年にかけて本院の医師数は「-1」。ほとんど変動がないという回答だった。3病院合計では「-33」となる。

次に年度替わりで、どれだけの医師が入れ替わったのかを確認するため、「今年3月末で退職した医師数」と「4月1日以降に入職した医師数」を質問した。

<回答 3月退職&4月入職の医師数>
退職:2021.3  本院121  東医療41  八千代医療39  合計201 
入職:2021.4  本院104  東医療33  八千代医療26  合計163 

本院の場合、3月に退職した医師数と4月の入職との差は「-17」。
3病院の合計では、医師201人が退職、入職は163人だったので、「-38」になる。

4月20日の記事において、筆者はその時点で確証を得ていた「3病院で100人以上の医師が減り、今年度の採用はこの数に及ばない」と記した。

今回、東京女子医大が明らかにした医師の退職者数は、記事の数字を大きく上まわる「3病院で201人」だった。

一方、今年度の採用は、退職した医師数よりも38人少なかったが、取材への回答書では、「医師数が若干減少しても、適正な水準は維持できている。一般診療、新型コロナ対応に影響はまったくない」と主張している。