柳川:世の中にない、新たな付加価値がつくサービスや便利なサービスを生むことが、企業の成長や社会の豊さに繋がります。同じものを安く作ったり、効率化したりすればいいということではなく、今までなかったものを生み出すことが重要だということです。
柳川:デジタル化のよさというのは、今まで手に入ることがなかった情報やデータが手に入り、さらにそれらのデータを分析することで、新しいインサイトやアイデアが生まれ、新しい製品が生み出されることにあります。つまり、デジタル化をしたとしても、そのような新しいインサイトが生まれなければ、あまり意味がありません。
須賀:既存のサービスを効率化して中抜きすれば、それが価値になるということではありませんよね。
柳川:やはり、そのようなアイデアは「新しい人」が生み出すと思うんです。昔からいる人が新しいことを思いつくこともあるかと思いますが、新しいアイデアやインサイトを持ってくるのは、「新しい人」です。
スタートアップやベンチャー企業だけでなく、他分野からの参入がイノベーションのためには重要で、それがないままにデジタル化をしても伸び代は小さいと思います。DXによる企業の変革も重要ですが、異分野からの新規の参入を促していくこととセットだと思います。経済学的に言えば、ある種の異質性が新たな価値を生み出しますので、そのような状況をいかにして生み出すかということが大切です。
須賀:なるほど。柳川さんは経済学者としてエスタブリッシュメントであるにもかかわらず、守備範囲が広く、お付き合いされている方も多岐にわたっていらっしゃることを印象として感じています。いまおっしゃったような考え方が影響しているのでしょうか?
柳川:そうですね。新しいアイデアや考えというのは、普段接することがない情報から来ると思っています。日頃から会っている人と話すことで深められる知識もあると思いますが、20年も会っている人と話をして、突然すごいアイデアを思いつく可能性というのはゼロとは言いませんが、難しいですよね。
違う分野、違う考え方を持った人と話すことで、まったく違う見方、新しいアイデアや発想が生まれます。特に今は、デジタル化の中で、異分野融合や縦割り構造の打破が重要だと議論されていますから、私の研究者としての頭の中も横展開をしなくてはならないと思っていますし、そこから生まれてくる新しいアイデアが重要だと思っています。
須賀:すでに実行に移されているということですね。本日はありがとうございました。前向きな希望が見えてきたような気がします。
(制作協力:黒鳥社)