「クラブハウス」今さら聞けない熱狂のカラクリ

このサイクルが回って新規ユーザー層の拡大が長く続き、既存ユーザーも使い続ければ、プラットフォームとしての地位を確立できるでしょう。

終わるシナリオ「粗悪なコンテンツやユーザーの増加」

――この数日でも状況は刻々と変わっています。

招待も概ね行き渡って飢餓感も薄れてきました。ユーザーが増えれば参加者もコンテンツも多様化します。駄話を垂れ流すだけのレベルのroomも増え、相互フォローによるフォロワー水増しを目的とした誰も話さないroomのような、本来の趣旨とは異なる使い方も目についてきました。

粗悪なroomが溢れれば真っ当なユーザが離れ、やがて廃れます。「悪貨が良貨を駆逐する」ということです。

――マーケッターの視点でビジネス活用の可能性をどう見ていますか。

Clubhouseの特徴は「今ここでしか聞けない」というプレミア感です。ファンミーティングや、開発秘話を聞くような、コアなユーザー向けのイベントに向いています。

イーロン・マスク氏の登壇がツイートで拡散してClubhouseのroomに人が殺到したように、Twitterとの相性は良さそうです。

録音・編集ができ、コンテンツを蓄積できるstand.fmやVoicyのような音声メディアと異なり、Clubhouseはコンテンツの録音をストックして再利用することができません。そのかわり気軽にイベントを量産できるといった、メリット・デメリットがあります。

Clubhouseありきで考えるのではなく、目的や前提をきちんと見極めて、自社に合ったツールを選び、用途を開発することが大事です。

ユーザー参加型メディアの渦中に飛び込む

――ビジネスパーソンはClubhouseにどう向き合うべきでしょうか。

これは「メディアの民主化」という歴史の大きな流れの潮目だと思います。傍観するより、渦の中に入ることをお勧めします。

今なら、ユーザー参加型の新メディアの熱狂がどのように移り変わっていくのかを、渦中で体感できます。新しいコンテンツや使い方が次々と開発されていく様子を目の前で見ることもできます。

新しいSNSが出た場合、早い段階で参加すれば、有名人と繋がれたりフォロワーを簡単に獲得できたりといった、先行者メリットを享受できることはよく知られています。

たとえば先日、アマゾンのCEO交代のニュースを聞き、その日のランチタイムにアマゾン(AWS)の元同僚で現在ソラコムの社長をしている玉川憲氏との対談イベントをClubhouseで行ったら、それをテレビ東京の方が聞いていて、その夜の「ワールドビジネスサテライト」に玉川氏が出演、といったことがありました。こうしたアウトプットの連鎖は、今後起こっていくと思います。

小島英揮氏がClubhouseで行った対談イベントの告知

Clubhouseがプラットフォームとして残るほうに賭けても損はありません。仮にサービスが廃れたとしても、その貴重な経験は学びとして残ります。

ClubhouseはAndroidにはまだ対応していないので、iPodや中古のiPhoneを買って始める人もいます。特に、マーケティングに携わる人ならそのくらいしてもいいと思います。

まずはとにかく気軽に試して、楽しんでみてください。

まあ、こんなことを1ユーザーである私が自然と口にしてしまうこと自体、コミュニティ・マーケティング成功の証しかもしれません。