「クラブハウス」今さら聞けない熱狂のカラクリ

room内の会話を記録・配信することは、利用規約で禁止されています。録音や配信のツールを使うと警告が表示されるなど、システム上でもルールの実効性は担保されています。

小島 英揮 (おじま ひでき) 2009年に日本での採用第1号としてアマゾン ウェブ サービス ジャパン株式会社(AWS)入社。日本最大規模クラウドコミュニティ「JAWS-UG」の立ち上げに携わり、ASWの日本市場での売り上げをアメリカに次ぐ世界2位の規模に押し上げた。AWS退社後は、複数企業のマーケティングを支援するパラレルマーケターとして活動中(写真:本人提供)

違反すればアカウントが削除されます。Clubhouseの登録には電話番号が必要なので、メールアドレスのように簡単に再登録はできません。アカウント削除は本人だけではなく、招待した人にも及ぶ場合もあるので、さらなる抑止力がはたらきます。

2名までという招待制なので、行儀の悪い人がいる可能性はそもそも低いでしょう。

有名人でも気軽にイベントに参加し、一般人とも近い距離感で話せるのはこの気軽さと安心感があるためです。

「飢餓感」を自然発生させる仕掛け

有名人でも安心して気軽にイベントを立てられるなら、一般人ならなおさらです。こうして質量ともにイベントが充実していきます。

業界関係者のオフレコトークや有名人同士の即興コラボも次々と生まれて拡散され、「自分も入りたい」と思う人が続出します。

しかし、参加に必要な招待枠は1人2名分しかなく、入りたいのに入れない大量の人々がSNSに「Clubhouseの招待をください!」と続々投稿し始め、メルカリに招待枠が出品される「事件」がまた人の目を引きます。

そんな刺激的で予期せぬことも起こるClubhouseのトークは、録音禁止のライブ配信なので、聞き逃すことができません。公開から開始まで数時間ということもざらで、目が離せなくなります。フォローしている人が登壇するイベントは公開されれば通知が来て、ついアプリを立ち上げたくなるでしょう。

また、参加や主催などの活動をすると、貴重な招待枠が追加で割り当てられるので、ますます活用したくなります。こうしてアクティブな人ほど多くの新規ユーザーを勧誘するようになります。

アメリカでのユーザー検証を経て、機能は極限までシンプルに削ぎ落とされているので、誰でもすぐに使えるようになります。

――Clubhouseは、かつて招待制で急速に広がった国産SNSのように、一過性で終わるのでしょうか。あるいは、ビジネスの「インフラ」として残るものになるのでしょうか。

熱烈なファンと化したユーザーが新しいコンテンツや使い方などを自分たちで次々と開発してコミュニティの魅力を高め、ユーザーが新しいユーザーを次々と獲得している現状は、コミュニティマーケティングの成長モデルである「Sell through the community」の典型と言えます。

だとすれば、今後コンテンツやユーザーがどういう方向に向かうかが、Clubhouseが一過性ブームで終わるかプラットフォームとして残るかを分けるでしょう。

残るシナリオ、終わるシナリオについて、私なりに予想してみます。

初期は有名人による価値の高いコンテンツが拡大を引っ張りますが、そのあとは一般の人々が主催する草の根的な集まりが継続的に生まれるかがポイントとなります。

多様なコンテンツが大量に生まれればアクティブユーザーが増えます。ユーザーが多ければ、手間をかけた質の高いコンテンツを提供しても元が取れます。質の高いコンテンツが話題になれば、新しいユーザーにリーチできます。YouTubeをイメージしてもらうとわかりやすいかもしれません。