プレゼン「人前で緊張しない」簡単すぎる3秘訣

まるで先祖の魂をよみがえらせ、その「言霊」や「託宣」を自身に憑依させる儀式のようですね。ここに「人前で話すときに緊張しない1つめの秘訣」があります。

【1】「スイッチ切り替え」のきっかけになる「おまじない」をつくる

私はニューヨークでコミュ力修業をしていたとき、アクティングスクールやブロードウェーのお芝居にひたすら通ったのですが、「何かが天から降りてくる」という表現を何人かの俳優の口から聞きました。

「まるで何かが乗り移り、鬼気迫る演技ができる」ということ。ある意味、自己暗示をかけて、「素の自分ではない、違うペルソナを引き出す」ことによって、恥ずかしさや緊張を超越できるというわけです。

恥ずかしがり屋だった私も、この「憑依芸」で緊張を乗り越える技を習得しました。ステージに上がる自分は「いつもの素の自分ではない」と思い込むようにしたのです。

「スイッチ」を押して、「別人格」になりきる。そうすることで、あまり人目が気にならなくなっていきました。

「人前で話す」のは、実はアメリカ人も苦手

「人前で話す」のは、実に緊張する作業です。得意そうなアメリカ人でさえ、「Public speaking(人前でのスピーチ・演説・プレゼン)は苦手」と考える人は少なくありません

ある調査によると、アメリカ人が最も恐怖に思うものナンバー1が「パブリック・スピーキング」だそうです。その後に、「高度」「虫・蛇などの動物」「溺れること」「血・針」「閉所」「飛ぶこと」「見知らぬ人」「ゾンビ」「暗がり」「ピエロ」「幽霊」と続きます。それぐらいアメリカ人にとっても「人前で話す」のは恐ろしいものなのです。

では、その「世にも恐ろしい、人前で話す緊張」を、どうほぐしているのか。そのひとつ目が、いま挙げた「おまじない」「ルーティーン」です。自分なりに「スイッチを切り替えるきっかけ」を作り、緊張を和らげているのです。

「スイッチの切り替え」は私の場合、脳内に「電気のスイッチ」をイメージし、意識的に「オン」にするシーンを思い浮かべるようにしています。「眠れる獅子」を覚醒させ、奮い立たせるメンタルトリックのようなもの。

多くのスポーツ選手が、本番前の独自の「ルーティーン」を持っていますが、そうすることで、緊張を緩和し、「ゾーン」と呼ばれる究極の集中状態に入っていけるというわけです。

【2】「目の前の人は『敵』ではない」と思い込む

もうひとつ、緊張を解く「おまじない」を特別にお教えしましょう。
そもそも、人前でなぜ緊張するのでしょうか? それは「人として当たり前の本能」だからです

知らない人、つまり敵に囲まれたとき、人は本能的に「生命の危機にさらされている」と感じ、緊張感・恐怖心にとらわれます。ですから、「いま目の前にいる人たちは『自分の敵』ではない」と脳に思い込ませればいいのです。

プレゼンを「対話、言葉のキャッチボール」にする

欧米で知らない人と会うとき、その役割を果たすのが「握手」です。「私は武器を持っていません」「あなたの敵ではありません」。そういうメッセージを握手によって瞬時に伝え、共感を作り上げることができるからです。

同じように、聴衆に手を差し伸べ、「バーチャルな握手」を交わし、目の前の相手が「敵」ではないという信号を脳に送る。そのためには、プレゼンは「モノローグ、ひとり語り」ではなく、「対話、言葉のキャッチボール」と心得るのです。

バージン・アトランティックなどの航空会社を立ち上げたイギリスの有名な起業家リチャード・ブランソンさんは「もともとプレゼンが、とても苦手だった」といいます。

そこで、「会場にいる友達と『おしゃべり』をしているだけ」と考えるようにしたそうです。「人前で話す」とき、たとえ眼前にいる相手が大勢でも、「1人ひとりとの対話の積み重ねである」と思うようにすることで、緊張することはぐんと減ります。