パニック売りを狙った投機のチャンスはおそらく過去のものになってしまったのではないでしょうか。ということで反省もこめて「2021年は株価が下がる局面はあるが、パニック売りは起きないだろう」という形に予言を変更したいと思います。
コロナ不況はどんな形でやってくるか。2020年は主に給与所得の減少によって消費者の財布の紐が固くなることによる一部業種への買い控えが問題になりました。昨年7~9月期の家計調査のデータを見ると勤労世帯での支出全体が1割抑えられる中で、外食、観光、アパレルといった分野で支出が軒並み2割ほど減っていることがわかります。
そしてそれよりもさらに遅れて2021年後半から2022年にかけて社会問題になるシナリオがありうるのが金融機関のバランスシートの傷みです。
これは特に地方銀行を中心に経済問題になるはずですが、観光業、飲食業、サービス業だけでなく、それ以外でも高額な耐久消費財を扱う企業の一部で将来不安からの買い控えの動きに打撃を受ける可能性はあり、地元の産業に対する貸付の回収が難しくなっている事態が判明するわけです。そうなると金融機関は新たな貸し出しが行いにくくなる。つまり投資が滞り、経済回復がそれだけ遅れることになるわけです。
昨年の夏から秋にかけては特定業種の苦境とその影響を私たちは体感してきたわけですが、それが別の業種にも広がる可能性はあり、そして耐えに耐えてきた企業が破綻をしはじめることで経済停滞が長期にわたるようになりかねない。これがこの先想定される新たなリスクなのです。
『日本経済予言の書』について、これから先の話を続けます。書籍に記したように「大半の人類にとってコロナショックは生死のリスク以上に経済のリスクだ」という認識は2021年に入っても変わりません。そしてまだ実現していない予想として「経済についての最大リスクは2021年のオリンピック中止リスク」という要素がまだ残っています。
多くの読者のみなさんは漠然と「いやいやもうオリンピックはいくらなんでも無理だろう」とお考えかもしれません。現実的にはそうなのかもしれませんが、その経済面での打撃はまだ織り込み済みではありません。オリンピックが正式に中止となれば、相応の経済の反動を覚悟しなければいけません
そして最後にもうひとつ、考えておかなければならない予言要素は「コロナを機に日本でもDX(デジタルトランスフォーメーション)が大きく進む」ことです。
これはイノベーションによる産業の健全な新陳代謝だということでもあるのですが、DXによるパラダイムの転換でコロナ後も永遠に需要が戻らない企業や業界が出るという負の要素が存在します。
一例を挙げればリモートワークが浸透すれば、オフィス需要や出張によるビジネスホテル需要の将来予測を大きく変更する必要が出てくる可能性がある。そういったことをこれから先、未来シナリオとして織り込んでいく必要がありそうです。
ここまでの話が2021年初段階での『日本経済予言の書』の予言のアップデートです。実際はこの後、緊急事態宣言にともなって日本政府がどのような対策を打ち出していくのかによって、また未来の前提が変わっていきそうです。このあたりを注視したうえで、今年も未来予測の専門家としてより正しくタイムリーな未来予測をみなさんに提供していきたいと思っています。