ちょうど書籍の原稿を書き上げた時期に政府が「新型コロナウイルス感染症緊急経済対策」を閣議決定したというニュースはあったのですが、当時はひとり10万円の特別定額給付金が実現するかどうかも不透明で、持続化給付金が対策の本命だと私は見ていました。政府がここまで踏み切って観光業界、飲食業界を支援するとは想定していなかった。ここは反省点です。
ただその点に関連して、まだ必ずしも外れたわけではない予言が残っているという点については今後気を付けなければいけません。それが「2020年の秋以降、大型倒産が相次ぐ」というものです。
飲食業界では残念ながら新型コロナの影響で2020年に過去最多の780件が倒産しています。アパレルも苦境が続いていて、昨年には大手のレナウンが倒産したことが思い出されます。「LCC(格安航空会社)が真っ先に危ない」という予測に関してはエアアジア・ジャパンが破産申請、韓国のイースター航空が経営危機、タイのノックエアラインズが経営破綻という形で現実になってはいます。
ただ、全体的に言えばまだかなりの企業が政府や銀行の支援を受けながらなんとか持ちこたえている状況です。これがこの冬の緊急事態宣言で頼みの綱が切れそうなギリギリのところまできてしまっています。いまのところ菅内閣から具体的な新規支援策は提示されていないこともあり、緊急事態宣言の冬を通じて新たな破綻企業が出現するリスクは相変わらず残っていると思います。
もうひとつ私の予測が外れたのが株価です。昨年、新型コロナのパンデミックが起きた当時、それまで2万4000円台だった日経平均が急落しました。しかしそれは行きすぎだと分析して私は「日経平均の下限は悲観的に見ても1万9000円のラインだ」という予測を提示しています。
そこまでは正しかったのですが、私は2020年の株価は2万円弱のラインで低迷すると考えていました。それが外れて株価は上昇を続け、年始段階で日経平均は2万7000円を超えるラインまで到達しました。
日本だけでなくアメリカの株価も上昇しています。経済のファンダメンタルズがコロナで打撃を受けたことよりもマネーの需給から株価が上がる力のほうが強かったということでしょう。ただ日米ともに新型コロナ第3波で経済がまた大きな打撃を受けることは間違いないでしょう。
株式投資の最大のリスクは、投資した企業が破綻して株が紙切れになってしまうことです。市場全体のインデックスが上昇しているからといって、自分が株主になっている企業が危うくなってしまえば元も子もないわけです。ですから2021年のどこかで再び株価が下がるリスクはまだ残っています。
ただもうひとつ違った観点で私の株価予測は外れそうです。「将来のどこかのタイミングでパニック売りが出る」と予測したのですが、企業倒産が相次いだとしても意外とリーマンショックのときに起きたようなパニックによる大幅な株価の下げは2021年についてはないかもしれません。理由はAI(人工知能)です。
これまではコロナショックのような不意打ちの不況が訪れると、株式市場にパニックが起きるのが通例でした。そこで「パニックで株価が下がれば買いだ」という人間心理の裏をついたセオリーで儲けることもできたわけです。実際私はリーマンショックで半値まで下がったグーグル株を買って大きく儲けた体験があります。
しかしそういった過去の株価の動きをAIが学んだことで比較的早く買い戻しが起きるようになってきたと私は思っています。実際、アメリカの株式市場では10年前以前にはよくアルゴリズム売買の暴走で株価の急落が起きていたものが、過去10年に限っていえばそれがほとんど起こらなくなりました。