前置きが長くなったが、分析結果について共有していこう。
まずはROAが相対的に高かった企業群、好調企業から分析したい。以下の表を見ていただきたい。これは、8つの会社評価スコアと総合評価、有給休暇消化率、残業時間が、翌期の業績(売上高営業利益率、ROA、売上高成長率)とどれだけ相関があるかを示したものだ。青地が濃いほど相関性が高く、赤地が濃いほど逆相関(数字が高くなるほど一方の値は低くなる)であることを示している。
まず、好調企業の相関性だ。ここでは「風通しの良さ」「20代成長環境」「社員の士気」のスコアが高いと、翌期の「ROA」はさらに上昇する傾向にあった。
逆に、「人材の長期育成」のスコアが高いと、翌期の「売上高成長率」「営業利益率」「ROA」が悪化する逆相関の傾向が見られている。
また、詳細は割愛するが「主成分分析」という分析手法を活用して、より傾向を明確にして見たところ、プロフェッショナル型の組織(「有給休暇消化率」「待遇面の満足度」「人事評価の適正感」が総じて高く、「社員の相互尊重」「人材の長期育成」が低い)では、翌期の「営業利益率」「ROA」が高くなりやすいという結果が得られた。
好調企業の中から、「風通しの良さ」「20代成長環境」「社員の士気」のスコアが高く、さらに翌期の「ROA」も高くなっていた会社のクチコミを紹介したいと思う。なお、ここで掲載しているクチコミはすべて一部抜粋・投稿者の意図を変えない範囲で要約している。
「企業理念として『感情報酬』を掲げている。社員全体にその意識が浸透しており、一般的に優秀とされる人材が多いと思う。朝会で毎日コミュニケーションを取ったり、四半期に1度の合宿などで感謝の気持ちを伝えあったりする機会も設けている」(アカツキ、総合職、在籍3年未満)
「新人に手取り足取り教える文化はなく、基本的に自力でキャッチアップしていくしかないが、周りに優秀な人が多く、仕事を個人に任せていくので、成長できる環境だと思う。また、新しい試みがどんどん生まれてきているので、手を挙げればやらせてもらえる業務の範囲は広い」(エムスリー、マーケティング、在籍3年未満)
好調企業においては、その勢いをさらに加速させるためにも、「業務や組織の分化を進め、年功序列のない風通しの良い組織」をつくることや、「既存事業だけでなく新事業への着手、またその新事業立ち上げを推進する士気の高い人材確保」が、業績好調を維持することにつながっていると考察をした。
続いてROAが相対的に低い企業群の分析だ。
低迷企業では、「法令遵守意識」「待遇面の満足度」「人材の長期育成」「社員の士気」のスコアが高いと、翌期の「ROA」は上昇する傾向にあった。
低迷企業の中から、「法令遵守意識」「待遇面の満足度」「人材の長期育成」「社員の士気」のスコアが高く、翌期の「ROA」が改善している会社のクチコミは以下の通りだ。
「キャリア開発に時間もお金もある程度かけていると思う。研修もタイミングで全員参加のもの、自分で手を挙げて参加するもの。さまざまな種類の研修が用意されている。また上長も研修への参加を促してくれる」(海運業、営業、在籍10~15年)
「大企業がゆえいろいろなキャリアを歩めることができる。また、自分から手を挙げて別の部署へのチャレンジをすることもできる。上司を見ると、さまざまなキャリアを歩んでいることがわかり、かなり参考になる。また、先輩も真摯にキャリア相談にのってくれる」(化学、開発製造、在籍3~5年)