業績が良くなる会社に共通点はあるのか――。
10月9日の配信記事「『コロナ禍の中で評価を上げた会社』ランキング」で、コロナ禍でも従業員から評価を上げる会社のランキングと、その特徴について分析をした。コロナ禍においても、「待遇面の満足度」「人材の長期育成」「社員の相互尊重」のスコアが改善している企業は、社員からの評価(e-NPS=自社推奨度)が改善していることがわかる。変化する時代に生き残る会社の条件を紹介したが、今回はもう少し踏み込んだ分析をしてみたいと思う。
具体的には、業績が良くなる会社にはどのようなクチコミが集まるのか? 今回は、企業評価分析に定評があるクレジット・プライシング・コーポレーションの協力を得てその分析を試みた。
現在、商品寿命が短くなり、常にヒット商品を生み出せる人や組織が必要となっている。また、価値の源泉が人となりやすい第3次産業のウエートが、国内産業の7割以上を占めていることから、どのような人が所属し、どのような組織を作れているかが未来の業績に影響することは容易に想像がつくだろう。先進的な投資家は、財務情報だけでなく、人や組織といった非財務情報も含めた総合的な投資判断をしている。
つい最近のことではあるが、2020年8月26日にアメリカ証券取引委員会(SEC=US Securities and Exchange Commission)は、上場企業に対してHuman Capital(人的資源)に関する情報開示を義務化した。こうしたニュースからも、組織や人が未来の業績に及ぼす影響に注目が集まっていることがわかる。
さて、本題に入るが、当社が運営している社員クチコミ・転職就職サイト「OpenWork」は、厳密な審査を経て公開している1000万件以上の社員クチコミや会社評価スコア、残業時間、有給休暇消化率を掲載している。
今回の分析では、OpenWorkに掲載されている会社評価スコア・社員クチコミと、業績との相関関係を調べた。分析対象は、業績開示がされており、比較的クチコミ件数が多く集まっている東証1部上場企業(約2000社)に限った。
OpenWorkの会社評価スコアは、「風通しの良さ」「人事評価の適正感」「20代成長環境」「法令遵守意識」「待遇面の満足度」「人材の長期育成」「社員の士気」「社員の相互尊重」の8つの項目で成り立っており、投稿者の回答を集計してそれぞれ1~5の5段階評価でスコアをつけている。またそれらのスコアから導き出される「総合評価」と、回答者のデータから算出した「有給休暇消化率」「残業時間」が集まっている。
人や組織の状態が、翌年以降の業績指標に影響するという仮説のもと、クチコミデータに関しては2016年以降のものを、業績データに関しては、その翌年にあたる2017年以降のものを活用している。ある年の組織がどのような状態(評価されている状態)であれば、その翌年の業績はどうなっているか(上がるor下がる)を毎年調査していき、傾向をつかむ。
また今回は2つのグループに分けて研究を行った。業績が元々良い企業群と、業績が元々悪い企業群とに分けた。具体的にはROA(総資産純利益率)が相対的に高い会社と、低い会社に分類している。意図としては、この2つのグループを混ぜたまま調査をすると、クチコミとは関係なく、業績が良い会社はクチコミのスコアも高く、翌年もその業績のおかげでクチコミスコアも高くなるし、業績も良くなる、という仮説を排除するためだ。