iPhone 12シリーズには、これまで製品に付属してきた充電器とLightning接続のヘッドフォンを付属させないこととした。ワイヤレスによる充電やオーディオの普及や、買い替える人が手元に同じものを余らせている現状から、思い切った決断を下したことになる。
iPhoneは年間およそ2億台が販売されるが、今後販売されるiPhoneの多くで、充電器とヘッドフォンのための資源を削減することができ、またiPhoneの箱そのものもよりコンパクトにすることで、輸送による環境負荷を低減できるようになる。
さらに、iPhone 12シリーズで用いられるレアアースや磁石は100%リサイクル素材を採用している。アルミニウムやステンレススチール、ガラスといったiPhone向けの外装素材はまだリサイクル化されていない。Apple WatchやiPad、Macではすでにリサイクルアルミが用いられていることを考えると、iPhoneの資源保護については、まだ道半ばである。
今回発表されたiPhoneは、モデルごとに、段階的に発売される。まず10月16日午後9時に予約が開始され、10月23日に発売されるのが、iPhone 12(税別8万5800円~)とiPhone 12 Pro(税別10万6800円~)で、6.1インチのディスプレーを備える2モデルが先行して登場する。
また5.4インチのiPhone 12 mini(税別7万4800円~)と、6.7インチのiPhone 12 Pro Max(税別11万7800円~)は、11月6日に予約が開始され、11月13日に発売される。アメリカでは11月3日に大統領選挙を控えており、iPhoneはモデルによって、大統領選挙を挟んだリリースの日程が組まれた。
保存容量は、iPhone 12とiPhone 12 miniは最大256GBまで、iPhone 12 ProとiPhone 12 Pro Maxは512GBまで用意される。iPhone 12 Proについては、Dolby Visionでの撮影やApple ProRAWでの保存を考えると、iPadのように1TBモデルがあってもよかったとも感じた。
新型コロナウイルス感染が収まらないなかで、アップルは1カ月遅れてようやくiPhoneの発表にこぎ着けることができた。特にシェアが4割以上となっている先進国においては、5Gの普及促進はiPhone任せになっている状況もあり、待望のリリースとなる。
その一方で、経済や消費が鈍っており、ハイエンドモデル一辺倒での進化ではなく、基本性能の充実と、小型で価格を抑えたモデルを登場させるなど、ミドルレンジの価格帯の充実という2020年のアップルのマーケティング施策をしっかりかなえたラインナップとなった。