5G対応「iPhone 12」は形も大きさも超絶進化

iPhone 12 miniは、アメリカ最大手の携帯キャリア「Verizon」のキャンペーンで月額12ドルで利用できる。これには、若い層に5Gを含む最新テクノロジーを提供し、iPhoneプラットフォームに呼び込むだけでなく、同価格帯の競合製品との差を手に取っても体験してもらいiPhoneから離れられなくするマーケティング上の戦略も見える。

携帯キャリアからすれば、端末が普及しなければ始まらない5G戦略の起爆剤として、iPhoneの5G対応を活用したいはずで、最も価格が安く設定されるiPhone 12 miniの存在は、テクノロジーに敏感な世代への訴求に欠かせない存在となるだろう。

日本市場でも、小型のスマートフォンが好まれ、価格が最も低く設定されながら性能が充実しているiPhone 12 miniが人気モデルとなることは間違いない。

5G対応は日米で異なる仕様に

iPhone 12シリーズの重要なアップデートは、5G対応だ。係争していたクアルコムと2019年4月の和解によって5Gモデムを調達し、iPhoneの5G対応に道筋をつけた。すべてのモデルで6GHz以下の5Gに対応する。日本では、NTTドコモ、KDDI、ソフトバンクの3社で、iPhoneで利用できる5Gサービスが提供されることが明らかになった。

イベントにはアメリカ最大級の通信キャリア、ベライゾンのハンス・ベストベリCEOが登場し、アメリカ内の5Gネットワークについて説明した。アメリカ向けのiPhone 12シリーズは、ミリ波を用いた5Gに対応し、最大4Gbpsの通信速度と超低遅延、同時多接続性を実現し、スタジアムなどでの多視点中継を楽しむことができるようになる。日本向けにはミリ波対応モデルは用意されず、端末の側面のデザインがアメリカ版とは異なる。

各国とも、5Gインフラの拡充はこれからで、現状は駅や商業施設などのスポットで利用することになる。iPhoneの通信制御でも、基本は4G LTE、必要なときだけ5Gを利用する「スマートデータモード」を採用することで、バッテリー持続時間の最大化に寄与する。もっとも、5Gがつながる場所は現状ほとんど見つけられないためとも解釈できる。

5G対応でプライバシーとセキュリティーの向上を挙げていた点は、アップルらしい解釈だ。5Gによる高速通信が利用できるようになれば、公共空間の無線LANを利用する必要がなくなるため、安全ではない無線LANを避けても体験を損なわずに済むというアイデアだ。

iPhone 12には、新たにMagSafeと呼ばれるワイヤレス充電規格が採用された。充電部分はこれまで通り共通規格のQiに対応し、7.5Wから15Wへと充電速度が向上している。そのうえで、MagSafeでは、ワイヤレス充電において頻発していた問題の解決に取り組んだ。

MagSafeはワイヤレス充電に、磁石による位置合わせと、NFCによるアクセサリー認識の付加価値を持たせた(写真:アップル基調講演ビデオより)

ワイヤレス充電パッドでデバイスを充電する際に問題になるのが、位置だ。パッドとスマートフォンのコイルの位置がズレると、充電がうまく作動せず、朝起きても充電できていない、ということがよくある。そこでアップルは、ワイヤレス充電コイルに位置合わせのための磁石を入れることで、問題解決に取り組んだ。

面白いのは「MagSafe」という名称とデザインだ。名称としては、USB-Cポートを採用する以前のMacBookシリーズで用いられていた磁石でくっつく充電器のリサイクルだが、実装としては現在のApple Watchで採用されている充電器を大型化したようなイメージだ。