「トランプ批判」終始する米メディアが残念な訳

メディアはトランプ大統領を批判し、人々の感情をあおっている(写真:ロイター/Kevin Lamarque)
2016年のアメリカ大統領選挙で、アメリカの主要メディアの多くがヒラリー・クリントンの勝利はほぼ確実と報道して、大恥をかいた。その背景には、米主要メディアや報道に携わるジャーナリストが民主党を支持し、報道などを通じて応援していたことがある。
一般市民は、報道に公平性と客観性を期待するが、アメリカの主要メディアはそこから大きく逸脱していると『失われた報道の自由』の著者マーク・R・レヴィン氏は批判する。
11月3日のアメリカ大統領選挙を前に、日本でもアメリカメディアのニュース報道に触れる機会が増える。その報道にどんなバイアスがかかっているのだろうか。
※本原稿は『失われた報道の自由』を抜粋・再構成しています。

あふれる「民主党支持」の論調

現代のメディアでは、報道に携わる人々自らが「報道の自由」を踏みにじっている。報道の自由が失われているのは、政府による弾圧や抑圧があるからでも、ドナルド・トランプ大統領がメディアを非難しているからでもない。原因は、放送局や新聞社、そこで働くジャーナリストたちにある。

かつて、ニュースといえば客観的な事実を集めたものだったが、いまは、社会運動やプログレッシブ集団(民主党急進左派を中心とする勢力。経済や社会などの問題解決で、政府による積極介入を志向)の意見、民主党を支持する論調で埋め尽くされている。

特定の意見やプロパガンダをニュースとしてまことしやかに流し、メディアがつくった「偽物」の出来事をあたかも事実のように報道し、ときにあえて事実を報道しないという選択をする。

不都合な事実には目をつぶり、偏った報道を行い、あからさまにうそをつく。中立かつ独自性を持つ視点は消え、大衆に受け入れられやすい、既存の価値観を強めるような報道が幅を利かせている。しかも、人々もそのことに気づいている。マスメディアの信頼性はかつてないほど地に堕ちている。

実のところ、大多数のアメリカ人は、そうした報道機関やジャーナリストを尊敬も信頼もせず、公平で信頼できる偏りのない情報源とは考えていない。

例えば、調査会社のギャラップ社は2018年10月12日にこんなレポートを出した。

「共和党支持者は一般に、無党派層やとりわけ民主党支持者と比べてメディアを信頼していない。共和党支持者は『メディアは共和党政権を不当に扱っている』という考えに賛成し、一方、民主党支持者は『メディアは何よりもまず大統領の権限を監視する組織だ』と見ている」

さらに「昨年(2017年)、民主党支持者のメディアへの信頼度が急に高まり、現在は76%だ。1997年の調査開始以降、ギャラップ社の政党別の数値としては最も高い。一方、共和党支持者のメディアへの信頼度は依然としてほかの政党の支持層をかなり下回り、わずか21%」。

つまり、共和党支持者のほぼ8割はメディアを信頼しておらず、民主党支持者のほぼ8割はメディアを信頼している。この状況は、民主党とメディアの間にイデオロギーや政策面で深いつながりがあり、メディアが民主党の主張をなぞっているにすぎないことを表しているように見える。

リベラル派が大きなスペースを占める

2002年から2018年までCBSニュースのジャーナリストで従軍記者だったララ・ローガンは、2019年2月15日、あるインタビューをポッドキャストにアップした。

そのなかで、メディアの職業倫理が崩壊しつつあること、メディアが民主党を優遇し、プログレッシブ寄りの意見を擁護していること、報道において独自で多様なものの見方が失われていることについて率直にこう語った。