「トランプ批判」終始する米メディアが残念な訳

同じ方法を当てはめていれば、オバマはもっと批判されていただろう。国民皆保険を導入すると36回も約束したこと、アルカイダが逃亡しているというもっともらしい主張を何度も繰り返したこと、ロシアがもはやアメリカの重要なライバルではないと誤った指摘をしたこと、在職期間に政権にスキャンダルがいっさいなかったという奇妙な主張をしたこと」

ところが、民主党の大統領とそのプログレッシブ的な政策を報道するとなると打って変わった態度をとる。

トランプ支持者の怒りが理解できない

「ワシントンのメディアは、全体としてオバマの選挙や政策に共感している。確かにアフリカ系アメリカ人の当選は歴史的な快挙だった。それに引きかえ、トランプ支持者たちがトランプに託した怒り、私たちに伝えた怒りは、歴史的に見て衝撃的というわけではなかった。

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ほとんどの政治ジャーナリストはその怒りが理解できず、彼らのプロ意識は打ち砕かれた」とマルコムは書いている。

トランプ大統領に不利な情報を明かす者なら誰でも時の人として注目を浴び、トランプ批判を放送するために、全国メディアのいろいろな媒体を繰り返し与えられる。だが、それらはたいてい希望的観測、臆測、政党の擁護、匿名の情報筋の話だ。まったくの誤りのこともある。

例えば、トランプ陣営が2016年の大統領選挙でロシア政府と共謀したとする、民主党を支持するメディアが流したストーリーも、完全なつくり話という結果になった。

このストーリーは毎日のように朝から晩までテレビや新聞やインターネットで「報道」され、メディアが考え出したさまざまな陰謀、策略、疑惑、推測、仮定、結論が伝えられてきた。

ひと昔前の報道機関は、特定の政党を支持していることを正直に認めていた。そしてたいていの場合、どの新聞がどの政党や候補者を支持しているかを市民はわかっていた。

だが現代のメディア報道では、そうした情報の偏りに気づかず鵜呑みにする人もいれば、疑いの目を向けても「つくり話」が交じっていることを見抜けない場合もある。

つまり、報道機関が特定の政党を支持し、偏った報道をしていることを率直に認めないかぎり、私たちのほうで、報道内容を検討・精査し、選別していかなければならない。