世の中には「ステレオタイプ思考」というものがあり、そのため人はつい、表面的な固定観念によって物事を決めつけてしまいがちである。例えば「東大生」と聞いただけで「頭のいい人」を思い浮かべてしまう方は、決して少なくないはずだ。
ところが『「考える技術」と「地頭力」がいっきに身につく 東大思考』(東洋経済新報社)の著者、西岡壱誠氏は、現役の東大生という立場からそういった捉え方を否定する。それどころか、もともと「頭のいい人」ではなかったというのだ。
「バカ」という言葉を簡単に使うのはどうかと思うが、それはともかく、東大生の代名詞でもある「頭のいい人」でなかったことだけは間違いないようだ。
では、2浪したとはいえ、なぜ東大に合格することができたのか? それは、頭のいい人のやり方、思考法をパクリまくったからなのだという。そのとき感じたのは、「頭のいい人は『思考回路』が違うんだな」という思い。思考の違いが「頭のよさ」をつくっているというわけだが、それは誰にでもまねでき、身につけられるものだというのだ。
たしかに、生まれつきの才能はまねできないかもしれない。だが、思考回路ならまねすることができる。そのような考え方に基づき、本書では多くの東大生に共通している「5つの思考回路」を解説しているのである。
どれも実用性が高そうだが、ここでは「上流志向で『難しいことを超わかりやすく要約』できる」の中から「要約力」に注目したい。それは、ビジネスパーソンに求められるべき重要なポイントであり、頭のよさを測る重要な指標でもあるというのだ。
西岡氏は、要約力が頭のよさを図る指標である理由について、要約が「情報の取捨選択」をする行為だからだと記している。
わかりやすいのは、分厚い本を読む場合のことだ。そんなとき現実問題として、その本の内容をすべて記憶することは不可能である。それは東大生でも同じだが、しかし彼らは、何百ページにも及ぶ教科書の内容を記憶し、何千ページもの論文を読んで研究を行っている。なぜ、そんなことが可能なのか?
端的に言えば、覚えるべき「ひとつ」を探す能力こそが「要約力」だということだ。その証拠に東大生の多くは速読の使い手で、どんな文章でもさっと読むことができるという。
つまり彼らの多くは、「キーワード」を探して本を読んでいるという場合が多いのだ。「これは、このキーワードについて書かれた文章だな」「なら、このキーワードの周辺を読んでいけば、自ずと要点が見えてくるだろう」というように、その文章の中から重要なキーワードを探し、その部分を重点的に読み、それ以外の部分を切り捨てているわけである。