SNS発信はうまく使えばリターンを得られます。しかし、リスクをとらなければリターンは得られません。
リスクと聞いて、みなさんが真っ先に思い浮かべるのは「炎上」でしょう。ネットにおける炎上とは、人や企業による不祥事や不適切な言動がSNS発信によって注目を集め、非難・批判が殺到する事態を意味します。ネット上での炎上が大きくなった結果、テレビのバラエティ番組やニュース番組でも繰り返し取り上げられ、さらにクレームが殺到することが年々増えています。
ビジネスパーソンも、こうした炎上とまったく無関係ではいられません。SNS発信を続けていると、もしかしたら炎上に遭遇することがあるかもしれません。自分が当事者となってしまう可能性もゼロではないのです。
対処のしかたを間違えると、組織のブランドや信用を傷つけることにもつながり、個人の問題では済まなくなります。
まず、炎上とディスカッションは分けて考える必要があります。発信者と読み手がたがいに見解や意見を述べ合うのは炎上ではありません。それはディスカッションです。炎上とは、発信者とは直接関係のない第三者が怒り、非難や批判をしてくることです。
炎上には、自分が悪い場合と、そうでない場合の2種類があります。過失がある場合に謝るのが不十分だと本格的に炎上してしまいます。
「お前には関係ない」とか「自分だけが悪いわけではない」などと言い訳するとさらに事態を悪化させてしまいます。発信をさかのぼられて過去の不適切な言動まで掘り起こされ、炎上騒ぎがいっそう大きくなってしまうおそれがあります。
自分が悪くない場合も、できるだけ丁寧な対応を心がけます。第三者の誤解であっても、相手にそう受け取られる理由が何かあったのかもしれません。事実は間違っていなくても、言葉づかいがよくなかった可能性もあります。
自分が悪くないからといって逆上したりせず、誤解させる余地を与えた点については素直に認め、リアルで面識のない人と接するときのように丁寧な言葉で、落ち着いて説明するのが対応として望ましいのです。
そもそも、なぜ炎上は起こるのでしょうか?
そこには3つの背景があります。
1つ目は、個人の発言が見えるようになったことです。インターネット、とくにFacebookやTwitterといったSNSの浸透によって、個人の情報発信が容易になりました。そのため、無名の個人であってもその発言や行動は可視化され、良くも悪くも話題になりやすい状況が生まれています。情報の拡散するスピードも速くなっています。そのおかげで、個人のSNS発信が時としてメディア並みの影響力をもつことがあるのです。
2つ目は、多くの炎上が「正義感」からはじまることです。炎上は「悪意」のある人がネット上に待ち構えていて、火をつけて回って起こるわけではありません。多くは第三者の「正義感」が火をつけるのです。
人によって何を正義とするかは異なります。正義の意味は1つではなく、人や立場によって変わる。そのことを意識せずに不適切、不用意な言動を発信してしまうと、人の正義感を刺激してしまうことになります。仲間内では許されていたことも、全世界の人の目にふれる場では許されない場合があることを想像しなければなりません。