3つ目は、炎上ネタをメディアが探していることです。一つひとつは小さなネット上の炎上でも、今はそれがネットのニュースメディアからテレビへと伝播し、急速にひろまっていきます。ある炎上がひとたび話題になると、ニュースのネタを追い求めて類似の発信を検索されたり、過去にさかのぼって見つけられたりします。
発信者が大手企業や有名企業、上場企業に勤めていた場合は、たとえそれが個人の発信であっても、その人が所属する組織の姿勢まで問われることがあります。「あの会社の人がそんなことをするなんて」という切り口でさらに話題性が増し、拡散してしまうのです。
とくに時事ネタなど、社会全体が特定の話題に注目しているタイミングでそれに関連する発信をすると、自分でも思わぬ反響が出てしまうことがあります。炎上芸人やインフルエンサーはあえてそういう話題に言及して、有名になろうとするかもしれません。しかし、ビジネスパーソンにとってはこのような発信は危険すぎます。
このように、SNS発信は、たった1人の正義感を発端に、個人や企業の問題ある言動がすぐさま話題になってしまう可能性もはらんでいるのです。
では、炎上を起こさないようにするためにはどうすればいいのでしょうか?
結論としては、シンプルです。リアルでしないような不適切な言動をしなければいいのです。
ビジネスに役立てることが目的ならば、まず所属する組織に迷惑をかけないことを基本スタンスとして頭に置く必要があります。
SNS発信をするから炎上するのではなく、不適切なことをするから炎上するのです。物事は白黒で片づけられることばかりではありません。人によって考えが異なるのはあたりまえのことです。
炎上は、最初の発信で起こることはあまりありません。炎上が起こるのは、往々にしてその後の対応を間違えているからです。
間違いは誰にでもあるものです。その時、不適切な言動を認めて修正し、謝罪すれば、まず炎上することはありません。これはリアルのコミュニケーションと同じです。仮に失礼なことを言ってしまっても「今のは失言でした、ごめんなさい」とすぐに謝れば、たいていの場合は許してもらえるものです。ネットの炎上は、この謝罪をしなかったり、ウソをついたり、相手の指摘を無視することによって発生するのです。
炎上は、「ボヤ」の段階で初期消火することが肝心です。火が大きくなると消すのはどんどん難しくなります。指摘を受けたら、冷静になって内容を見直してみて、相手の指摘がもっともだと思うなら、素直にすぐ謝ったほうがいいのです。
自分のことを何も知らない匿名の第三者から批判されるのは、気分が悪いものです。人格否定をされたような気がして、つい反撃したくなる気持ちもわかります。ぼくら日本人はディスカッションやディベートに慣れていませんから、相手から強い調子で何か言われると、人格否定や個人攻撃と受け取ってしまいがちです。
ただし、本当にスキや非があったのなら絶対に反撃してはいけません。印象が悪くなるだけでなく、さらに火を大きくされてしまうおそれがあります。仮に問題がなかったとしても、言葉を荒らげて反撃しては相手の土俵にのって売られたケンカを買ったように見えてしまいます。
ネット上の議論に勝つことはあり得ない。相手を変えることもできない。売られたケンカを買わない。逃げるが勝ち、なのです。
ある意見には、必ず反対の意見が存在します。ネット上での発信がかんたんにできるようになったということは、知らない人に自分の意見を聞いてもらえるかわりに、反対意見の人からのフィードバックが返ってくる可能性もあるということです。発信をするなら、自分と違う意見を聞かされたり、反論が返ってきたりするのは当たり前なのです。