コロナ禍で住宅メーカーが商機を見いだす事情

ステイホームの影響で、在宅ワークスペースを住まいに求めるニーズが高まっている(写真:大和ハウス工業提供)

新型コロナウイルスの感染拡大に伴う外出自粛「ステイホーム」が、私たちの暮らしに重大なインパクトを与えていることについては、多くの人の間で異論がないことだろう。何しろ、緊急事態宣言解除を経た今、「ニューノーマル」という、新たなライフスタイルへの適応が求められているくらいだからだ。

この一連の出来事は今後、住まいの在り方に非常に大きな変化を促す可能性がある。というのも、住まいは暮らしの中心に位置づけられるものだからである。特に、今回の暮らしにおける変化はこれまでに経験したことがない早さと規模で進行しているものだ。このため、ステイホームや在宅ワークの実態に関する調査や分析が、すでにいくつか見られる。

男性より女性の方がステイホームに負担感

例えば、積水ハウス「住生活研究所」がまとめた「在宅中の家での過ごし方調査」では、ステイホームそのものに関して、人々がどのように感じているのかを明らかにしている。

それによると、在宅時間の増加によってストレスが増えた人は全体で60%となっており、男女別では男性が51%、女性が70%と、女性のほうがストレスが増えたと感じているという結果となっていた。

ストレスが増えた理由としては、全体で「運動不足」(37%)、「家計の出費増」(22%)、「家事量の増加」(20%)などとなっており、特に家事量の増加については女性が39%と、男性の13%よりも負担感が大きかった。

旭化成ホームズの「くらしノベーション研究所」は在宅ワーク実態について調べている。それによると、家族とのコミュニケーションの増加や、通勤時間が削れる一方で、「仕事量が増えた」「ON・OFFの切り替えの難しさ」、「常に仕事のものが目に入ってしまう」、「部屋が散らかりやすい」などがデメリットとして挙げられ、特に女性のほうが日常との切り替えに苦労しているとの声が見受けられた。

そうした環境下で、どこで在宅ワークをしていたのか。同調査によると、戸建て住宅の54%が個室で、リビングダイニング(LD)の41%を上回り、逆に集合・賃貸住宅ではLDが71%と、個室の27%を大幅に上回っていた。

図は個室派とLD派で、在宅ワークで重視した要素を表したものだ。それぞれで異なるが、「実際には両方の要素が必要でバランスが大事」と、同研究所顧問の松本吉彦氏は指摘している。

個室とLDでは適した仕事や作業の内容があることがわかる(旭化成ホームズ「くらしノベーション研究所」の発表資料から抜粋)

中でも、多くの人が気にしたのが家族の存在ではなかろうか。特に子どもがいる世帯ではそうだ。新型コロナウイルスの感染拡大は、学校休校や保育施設の閉鎖を招き、それも人々の暮らしに大きな変化をもたらした。

同研究所では子どもと在宅ワークの関連についても調べており、小学生以下の子どもがいる世帯の半数で家族の気配や見守りも重視し、LD派のほうがその傾向が強かったことを指摘している。

今後は在宅ワークが当たり前に

さて、経団連による「緊急事態宣言の発令に伴う新型コロナウイルス感染症拡大防止策 各社の対応に関するフォローアップ調査」によれば、在宅ワークを導入していると回答した企業が406社中97.8%にのぼっていた。

緊急事態宣言解除後、出勤者が増えたが、働き方改革や生産性の向上の観点から、今後も多くの企業が在宅ワークを継続しそうだ。また、前述した積水ハウス住生活研究所の調査でも、多くの人たちが今後も在宅ワークを前向きに捉えていることが明らかになっている。