楠木 建(以下、楠木):これを話している時点では、コロナ騒動で依然として不自由な生活を強いられているわけですが、たまにはこういうことがあると、「世の中そんなに思いどおりにはならないものだ」という、当たり前だけど忘れがちな事実に改めて気づかされます。
コロナに限らず、考えてみれば仕事もキャリアも思いどおりにならないものですよね。そういうときにどう構えるか。高森さんは挫折をきっちり経験している。思いどおりにならないときの思考と行動という観点で話をする相手として最適じゃないかなと思いまして。
高森 勇旗(以下、高森):すてきなフリをありがとうございます(笑)。お相手に選んでいただき光栄です。思いどおりにならないことも、挫折も、確かに客観的に見ると、たくさん経験している人に見えるかもしれませんね。
楠木:「思いどおりにならない」を2つのタイプに分けて話をしたいと思います。
まずは「環境」。コロナがその典型ですが、思いどおりにならない環境に置かれたときにどうするか。自分の外にある「思いどおりにならない」ですね。
もう1つは、自分の中にある「能力」。仕事で成果を出すには能力が必要ですが、すぐに何でもできるようにはならない。そうしたときに自分とどう向き合うか。
これを読んでいる方の中には高森さんについて知らない方もいらっしゃるでしょうから、まずは自己紹介を兼ねて、どのように「思いどおりにならなかったか」ということについてお話しいただけますか?
高森:僕は2007年から2012年までの6年間、横浜ベイスターズ(現・DeNA)でプロ野球選手をやっていました。結果という結果はまったく出すことができず、6年でクビになりまして。その後、いろいろあって今は企業のコンサルティングと執筆活動をやっています。
思いどおりにならなかった、という観点で言うと、やはり入団6年で戦力外通告を受けたあたりがポイントでしょうか。
楠木:プロ野球をクビになる。あからさまな「挫折」ですよね。そういう、はっきりとした挫折っていうのを、僕は経験したことがないんですよ。なぜかというと、挑戦しないから。
高森:(爆笑)
楠木:「オレは人に裏切られたことがない。なぜなら人を信用したことがないからだ」みたいな、そういうヤツなんですよ。自慢じゃないですが、本当の意味での挑戦というのをしたことがない。
ところが、高森さんはすごい高い水準で挑戦と挫折を経験していますね。その渦中では、どんなことを思ったり感じたりするのですか?
高森:僕にとって、戦力外通告そのものは挫折でも何でもなかったのです。どちらかというと、前向きに受け入れられたというか。挫折体験そのものは、プロ4年目です。あのときは、人生で初めてと言っていいほど暗い日々でしたね。
楠木:それはなぜですか?