マスメディア、そしてSNSを通じて、有名・無名を問わず大量の「私の意見」が飛び交う昨今。有益な情報もある一方で、ある意見を否定したり、諌めたり、たしなめたり、中にはイチャモンのようなものも少なくありません。
未知の問題に直面したとき、どうして前向きな議論ができないのか? 拙著『思考と行動を高速化する 超速!問題解決』の中から、無駄な議論が増える決定的な原因と、自分で判断し行動していくための原理原則を解説します。
みなさんは会議や打ち合わせに出ていて、「何も結論が出なかった」とか「こんなことなら自分の作業をしていたほうがマシだった」などと思ったことはないでしょうか。あるとしたら、それは「アイデア探し」に陥っていることが原因かもしれません。
例えばこんなシーンです。上司がチームのメンバーに声をかけて、緊急の打ち合わせをしています。
「今期の予算、未達になりそうだ。予算達成に向けて営業のテコ入れ策を考えよう。上から施策を押し付けるより、みんなで考えたほうがモチベーションも上がるし、結果も出ると思う。遠慮せずに、みんなどんどんアイデアを出してほしい」
この瞬間から、打ち合わせに参加しているメンバーの思考は、「アイデアを出す」ことに向かってしまいます。
「やっぱりテレアポを増やすしかないんじゃないですか?」「それも必要だと思うけど、時間がないんだから確度の高い顧客に絞って提案することが大事では?」「でも数字が取れてる人もいるんだから、まずその人のノウハウを共有したほうがいいんじゃない?」「いや、それだったら、取れる人に必ず同行してもらう仕組みにしちゃったほうが確実でしょ」
一見すると活発に議論されているように見えますが、やっていることはアイデアの乱れ打ちです。「アイデア探し」から入ると、話し合っているようで話が進まず、考えているようで考えていない、無駄な時間になりがちです。
建設的な議論ができない最大の理由は、問題の「現状」と、「理想」という目的が共有されていないことです。
「問題が起きた→何をしよう」ではなく、今自分たちはどういう状態で、どんな状態に変わることを目指すのか。これを意識することから、すべての問題解決は始まります。
問題解決できる人の「頭の使い方」は、「カーナビ運転のようなもの」です。車を運転していて道に迷ったとき、私たちはごく自然にカーナビを使います。そして現在地と目的地を確認して、最適なルートを検索します。地図を確認せずに、自分の感覚で右折したり左折したりしていても、意外と目的地に着かないという経験はみなさんにもあるのではないでしょうか。
問題解決はそれとよく似ています。地図を開いて、目的地をセットして、最短経路を割り出し、運転する。問題解決の一連の「頭の使い方」をインストールしていれば、どんな問題にも対応できるようになります。
問題解決のスタートは、現在地と目的地を示す地図を広げてみること。その地図となるのが「3つのボックス」です。頭の中であれこれと渦巻いていることを「現状」「理想」「アクション」の3つにわけることで、問題の現在地(=自分が置かれている状況)と、目的地(=どこへ向かおうとしているのか)を整理します。
「3つのボックス」に整理することには、「物事を構造的に理解できる」という効果があります。
構造というのは、構成要素と、要素間の関係です。簡単にいうと、何が、どういう状態になっているかということ。漠然とした問題も、何が、どういう状態か分解してとらえることで、冷静に見つめることができるようになります。