「主観的発見」とは、人の気持ちの中にある発見です。僕の手がけたコピーを例として挙げます。
●「父が涙もろいことは、テレビが教えてくれた。」
●「集中には、きっかけがいる。」
どちらのコピーも「言われてみれば、確かにそうだな」と読み手に共感してもらうことを狙っています。心のどこかで思っていることを言い当てる、ということですね。僕はこれを、ちょっと難しい言葉で「潜在的感情の顕在化」と呼んでいます。
「主観的発見」は、基本的に「経験」の中から探します。直接経験したことはもちろん、友達に聞いた話などでもいいでしょう。上記のコピーを見ればわかるように、特別な経験である必要はありません。むしろ、いつもの毎日のほんのささいな瞬間を、一歩踏み込んで考えることが大切です。
例えば「子どもの頃、一緒にテレビを見ていたとき、父はよく涙ぐんでいた」というエピソードであれば、誰でも心当たりがあると思います。そこを一歩踏み込んで考えて「一緒にテレビを見なかったら、泣いているお父さんなんて目にする機会無かったかもな。父が涙もろいことは、テレビが教えてくれた、とも言えるな……」と「発見」に育てていけばいいのです。
それでは、どうやって「主観的発見」で文章を面白くするのか? エントリーシートの「学生時代に頑張ったこと」を例に見てゆきましょう。
いかにも就職活動らしい文章ですが、「発見」が無いので読み手は退屈です。次のように書き換えてみましょう。
一見、ありきたりなエピソードにも、深く考えれば「発見」があることがおわかりいただけたと思います。
企画書も「発見」があると無いとでは、印象がまったく変わります。例えば、次の文章を読んでみてください。広告会社がスニーカーメーカーに、販促キャンペーンを提案している企画書です。
強いて言えば3文目が「発見」ですが、後はすべて「前提の共有」であり、読み手が知っている内容です。こんなスライドが2、3枚続いたら、すっかり飽きてしまいます。そこで、次のように書き換えます。
提案するメディアプランの内容が同じでも、その前のスライドに「発見」があれば、より「面白く」感じると思います。
「前提の共有」も大切ですが、それに終わらず、「発見」を入れるように意識してみてください。