文章は面白くないと読んでもらえません。ところが当たり前のように、「ビジネスなのだから、面白さなど必要ない」と思っている人が大勢います。こういう誤解が、ビジネス文章を読みにくくしているのです。
どんな会社や職業であっても、文章の目的は同じです。読んだ人の感情や行動に何らかの影響を及ぼすために、あなたはキーボードに向かっているはずです。面白くないものが影響力を持つことはありません。
面白いといっても、笑いを取れとか、オチャラけろと言っているのではありません。「面白い」という言葉は人によって解釈がさまざまで、しばしば誤解を生みます。筆者もよく営業から「このクライアントに、面白いコピーはいらないんです。かたくてマジメじゃないとダメなんですよ」と言われます。しかし「面白いこと」と「かたくてマジメなこと」は、両立可能です。本記事における「面白い」という言葉の定義を明らかにしたいと思います。
「面白い」とは、「発見」があることを指すのです。
突然ですが、江戸時代の武士は門限が早く、夜6時だったことをご存じでしょうか? いざというとき、戦いに駆けつけるため、というのが理由です。言われてみれば、なるほどと思いますよね。同じ理由で夜遊びも禁止だったそうです。
あなたは今、「武士の門限が夜6時」という文章を読んで「面白い」と思ったのではないでしょうか。それは、新しい事実を「発見」したからです。
ちなみに「武士の門限は夜6時」という豆知識は、「鬼平犯科帳25周年記念動画 鬼へぇ」というウェブムービーをつくったときに調べたものです。ビジネスとは関係ないですが、ぜひ見てみてください。時代劇好きの上司との雑談のネタにはなると思います(笑)。
話を「発見」に戻します。
僕はよく新人コピーライター研修で「亀のコピーを書きなさい」という課題を出します。すると、ほとんどの人が
「マイペースで行きましょう」
……みたいなコピーを書いてきます。
このコピーがつまらないのは、亀は動きが遅いという誰でも知っていることを、広告コピーっぽい体裁で言い換えているだけだからです。「発見」がまったく無いのです。
それでは、次のコピーを見てください。
どのコピーも、明らかに「マイペースで行きましょう」より面白くなっています。少なくとも読み手に「発見」を与えようとする姿勢があります。
ビジネスであれ何であれ、文章を書くときは読み手にとって「発見」があるよう意識することが大切です。話をカメの性別に戻すと、卵が28℃以下の場合はオス、28~29℃の場合はオス・メス半々、30℃以上の場合はメスになるそうです。
「発見」というだけではわかりにくいので、より掘り下げましょう。「発見」は「主観的発見」と「客観的発見」の2つに分けられます。