人間の記憶には短期記憶と長期記憶の2つの段階があるのはご存じでしょうか。
例えば、本を読み、覚えたと思ってもすぐに忘れてしまうのは、記憶が長期記憶になっていないからです。短期記憶に記憶しても、新しい情報が入ってくるとすぐに忘れてしまいます。
では、どうすれば長期記憶に残りやすくなるのでしょうか。その仕組みについては世界中の脳科学者や心理学者が研究を進め、記憶の流出を防ぐ「復習」のタイミングに関しては答えが出ています。
ベストな復習のタイミングは「忘れた頃に復習すること」です。要するに「あれ、何だっけ?」「ここまで出かかっているんだけど……」という瞬間がベストなタイミング。長らく「忘れないうちに復習するといい」とされてきましたが、これは間違いでした。
忘れないうちの復習は、短期記憶を何回も何回も繰り返しているだけ。そのときはしっかり覚えたように感じても、長期記憶への定着は進んでいないのですぐに忘れてしまいます。
一方、忘れかけたときに復習すると「生存に関わる重要な情報を優先して記憶する」という脳の性質が働きます。そのとき生まれる、口惜しい、もどかしいという「強い感情」が記憶のキーになります。「わざわざ思い出そうとしている=重要な情報に違いない」と長期記憶に定着しやすくなる、というわけです。
つまり、タイミングよく復習をし、思い出す作業=「想起」を行うことが脳と感情への刺激となり、記憶の定着につながるのです。
こうした記憶の仕組みを利用し、読んだ本の内容を覚える方法として私も実践しているのが、「ミニテスト」です。手順は簡単。
読んだばかりのページなら簡単に思い出せそう……と思うかもしれません。しかし、実際にやってみるとわかりますが、私たちの記憶力は曖昧で1、2分前に読んだページの内容もすぐにおぼろげなものになってしまいます。
最初は記憶に残したい1ページごとに「ミニテスト」を行い、慣れてきたら「1つの大見出しごと」「1章ごと」などで区切り、本を閉じましょう。そして、「著者がいちばん言いたかったことは何だろう」「ここでいちばん面白い概念は何だっただろう」と、自分の頭の中でまとめていきます。
ペンも紙もいらず、見ないで思い出す「想起」を挟むだけ。これで長期記憶に定着する確率は50~70%上がることがわかっています。
さらに、読んだ本の内容を鮮明に記憶し、活用していくために役立つ復習法が、「分散学習」です。
これは復習の間隔を少しずつ延ばしていくテクニック。間隔を空けながらミニテストを繰り返すイメージです。一度、長期記憶に定着させた情報を思い出すことで、自分が持っているほかの記憶と結び付き、さらに深く覚えることができます。