一定の時間を空けて想起し直すことは脳に効果的な刺激を与え、記憶の定着率をさらに高めてくれるのです。
分散学習で気になるのが「どのくらい間隔を空けて復習するのがベストなのか?」。この間隔についてピョートル・ウォズニアックという研究者が、英語の学習時のデータをもとに最適な復習のタイミングをまとめています。
このスケジュールは人間の記憶が薄れていく時間の平均値をベースに組み立てられたもので、前述した「忘れた頃に復習」できるよう調整されています。
ただ、ここまで細かくスケジュールを合わせていくのは難しいので、私は読書に関しての復習はタイミングを3つに分けて実行しています。
この間隔で復習=本を読み直すことで、内容への理解度を深め、重要なポイントをしっかりと記憶できるようになります。
先ほど少し触れましたが、基本的に脳の記憶に関するメカニズムは、生死に関わること、生活に根ざしたこと、強い感情と結び付いたことを優先的に記憶するようにできています。そこで、本のキーポイントを必要なときに、自在に再生できる記憶術を紹介しましょう。それが、「インターリービング睡眠」です。
認知科学の世界では、以前から睡眠が記憶の定着率と密接に関係していることがわかっていました。あなたも「勉強をした後に睡眠を取ると記憶に定着しやすい」「睡眠中に記憶が整理されるので、寝る前に復習すると効率的」といった話を聞いたことがあると思います。
こうした睡眠と記憶の関係を「睡眠によって学習効果をより高くするためには?」という問いを立てて調査したのが、フランスのリヨン大学の研究チームです。
彼らは、40人の男女を対象にスワヒリ語を記憶してもらうというリサーチを実施。その際、参加者を2つのグループに分け、勉強の仕方を変えてもらいました。
A、Bどちらのグループも1日しっかりとスワヒリ語を勉強していますが、Bグループは昼寝を挟んでいるわけです。
その後、全員に覚えた単語のテストを行いました。すると、勉強の合間に睡眠を挟んだBグループはAグループに比べ、単語を多く記憶していただけでなく、想起能力(思い出す能力)も高まっていたことがわかったのです。
勉強と勉強の合間の睡眠ということで、研究チームは「インターリービング睡眠」と名付け、「睡眠を取らなかった場合と比べると約2倍の記憶力、想起能力の違いが生じる」と指摘しています。
ポイントは、勉強が一区切りついたところで眠るのではなく、中途半端でも時間で区切り、仮眠を取ること。インターリービング睡眠には、1回学んだことを忘れにくくする効果もあります。読書や勉強というインプットの後に脳を意図的に使わない状態にすることで、記憶が定着しやすくなり、必要なときに応用する想起能力も高まるからです(ここで言う想起能力とは、記憶したデータやエビデンス〈科学的根拠〉、テクニカルターム〈専門用語〉を必要なときに活用できる能力だと考えてください)。
インターリービング睡眠を読書に当てはめるなら……。
「この章には重要なデータやエビデンス、テクニカルタームが書かれているから最後まで読み終えてから休憩しよう」