さらに、結婚を境に先生の態度が急変したと嘆く。「結婚前は先生が急な体調不良でレッスンをキャンセルすることがあっても、翌週のレッスンできちんとお詫びの言葉を述べていたが、結婚を境にそんな言葉もなくなっていたことも気になっていました」。
その後も通常どおりレッスンは続く。しかし、通い始めて3年目、ある月末のレッスンで先生から告げられた話が、山下さんの怒りを買った。
「“プライベートが忙しくなったので、山下さんのレッスンは来月末で終わらせていただきます。ほかの方のレッスンも徐々に減らしていく予定です”と突然切り出されたんです。結婚当初は、苗字も変わらないし、レッスンにもなんら影響はありませんと、はっきり私に言っていたんですよ。それでも予定が変わることはあるでしょうが、(私に)相談くらいするのが常識でしょう!」と語気を強める。
沙也加先生のレッスン終了まで1カ月の猶予があるが、それ以上に突然の報告に衝撃が走った。山下さんへの相談や“匂わせ”がなかったことに、納得がいかないという。
沙也加先生の最後のレッスン終了後、山下さんは子宝のお守りを渡す。
「子どもが欲しいと言っていたので、お参りをしてきたんです。でも、今度は受け取り拒否でした。いーです、いーです!って。推測ですが、旦那さんが手紙を読んだりして、先生に何か忠告しているんじゃないですかね」
子宝のお守りのような“魂”を感じる贈り物は、相手との距離感によっては違和感を抱いてしまうのだろうか。山下さんが感じる先生との距離感と、先生からみる山下さんとの距離感に大きなズレが生じている可能性があったのかもしれない。
トラブルは続く。先生とのレッスンは予定どおり終了したが、期間を置かずして、教室の前で沙也加先生とバッタリ会った。それは山下さんが今までレッスンを受けていた時間帯……。
「プライベートが忙しくなったからと、私のレッスンの時間が削られたのに、どうしてその時間帯に教室にいるんだと。びっくりして、つい、“話が違うじゃないですか!!”と怒鳴ってしまいました」
先生からは、他の授業の準備のため、たまたま仕事をしていたとのことだが、山下さんの感情が一気に爆発してしまったという。男性からいきなり怒鳴られたら、どんな理由であれ恐怖を感じてしまうのでは。先生は逃げるように去って行った。
これを機に、もともと女性に抱いていた不信感が確定したという。
「離婚経験のある友人から話を聞くと、仮にどんなに長く付き合ったり同棲しても、結婚したら女性は豹変すると聞いていました。しかし、まさか自分がこんな目に遭うとは……。そんな豹変するリスクを背負うなら、こっちだって、それ相当の見返りがないとバランスがとれないんですよ。
本当は自分を立ててくれるとか、性格が合うとか、内面的なものを見たかったけれど、豹変することを考えると期待できない。それならトータルでできるだけマイナスにならないようにしたい、だから美人じゃないとダメなんです」
年齢とともに容姿は衰えるものだが、それはそれで、“土台”がよければいいそうだ。
山下さんは、一戸建ての家を購入し、自宅で無料学習塾を開くことを検討している。自らも貧困家庭で育ち、学歴コンプレックスがあるそうだ。仕事上で必要な危険物取り扱いや電気関係の資格取得の勉強は、親戚から好意で教わった。この経験から、自分も無料の学習塾を開き、社会貢献をしたいのだという。
SNSで無料学習塾の計画を話すと、95%の人はすばらしいと賛同し、残り5%は、“(そんなあなたと)結婚して苦労したくない”とネガティブな意見も返ってきた。その5%に山下さんの意識が向く。