今回登場するのは自営業の山下さん(38歳、仮名)。「インタビューに失礼があってはいけないので、フォーマルな恰好で伺います」と、休日にわざわざスーツを着て登場してくださった。身長170cmの細身、趣味は草野球やギターを弾くことだと言い、明るく気さくな雰囲気だ。
両親はすでに他界。母は、山下さんが高校を卒業するころに、父も山下さんが23歳のときに、ともに病気で亡くなった。兄弟はおらず一人っ子だ。
幼少期の山下さんは、小学5年生のときに転校した学校になかなかなじめず、半年ほど不登校に。これにいら立った母親から時々体罰も受けたという。家にも学校にも逃げ場がない環境は、想像するだけで厳しい……。しかし山下さんからは悲壮感のような雰囲気は感じられず「今思えば、親も仕事のストレスで大変だったんだと思います」と話をしてくれた。
そんな山下さんは現在独身。結婚相手には、2つの条件があるという。1つは、“相当な美人”であること。2つ目は、“将来自宅で無料の学習塾を開きたいので、それに理解を示してくれる人”であること。
相当な美人とは、山下さんが好む、フジテレビの三田友梨佳アナウンサーや女優の堀田茜さんクラスを指すという。その基準に満たなければ納得しないと真顔で語る。
まず、なぜ山下さんがここまで絶対的に“相当な美人”にこだわるようになったのだろうか。
きっかけは今から5年前、英会話教室での出会いにある。もともと英語に興味があった山下さんは、趣味の1つとしてレッスンに通い始めた。そこで出会ったのが沙也加先生(仮名、当時20代)だ。
「気立てが良くて優しくて、とても感じのいい先生でした。古風でふんわりとした雰囲気で、相手を立ててくれるような人で……」。山下さんの口調も滑らかになる。
週に一度、1回30分の個人レッスン。仕事と家の往復だけだった生活に潤いが生まれ、英会話はメキメキ上達した。
しかし、沙也加先生には当時からお付き合いしている男性がいて、山下さんもそのことは知っていた。
はじめに微妙な空気が流れたのは、先生が結婚して山下さんが手紙を渡したときだという。
「“結婚おめでとうございます。末永くお幸せに”と手紙を書いて渡したんです。でも、翌週のレッスンで、先生から手紙について何も触れてこないんです。普通、手紙をもらったらお礼を言うのが当然ですよね。なので、“手紙があまり気に入らないようでしたら、返却されますか?”と尋ねてみたら、“では、お言葉に甘えて”と言って手紙を戻されちゃって」
普通はそういうものなのか? そして、1度出した手紙を返却されるというのはどうしたことでしょうか?
山下さんによくよく話を聞くと、手紙には、「人に優しく自分に厳しい、そんなところが好きです。あなたのことは人柄も高く評価しています」といった内容のことを書いたと言い、読む人が読めばラブレターにもみえたことは否めないとひっそり語る。山下さんにとって、沙也加先生は女性としても魅力的に映っていたのだろう。