世の中に小説家を目指している人は多い。小説家になるために何年にもわたり応募を続けている人もいる。
澤村さんは、小説家を目指していたわけではない。ほぼ、なりゆきで小説家になった。
「僕はこれから、そういうまっすぐに小説家を目指して書き続けている人たちと戦っていかなければなりません。先輩の作家にも小説家になりたくてなった人が大勢います。正直怖いです。怖いですが、それが楽しくもあります。
年齢も40歳になり『もう次のチャンスはないぞ』とつねに自分をいさめています。『状況が悪くなってももう逃げ場所はないぞ』って。小説家として死ぬまで食っていく覚悟を決めました」
澤村さんは今までの人生を振り返ると、「何も無駄なことはなかった」と思う。
「はたから見ると、僕の人生は挫折続きに見えるみたいです。でもストーリー的には破綻していないと思います。
今までにあった一つひとつの経験が全部、小説家としての糧になっています。人生のいろいろな出来事がパズルのピースのようにハマっていき、ちょうど空いたところにすっぽりと小説が収まったんだと思います」
と、澤村さんは明るく語ってくれた。
澤村さんの小説家としての人生はまだ始まったばかりだ。これからも、さまざまな小説を生み出していってほしいと思った。