カニネンによれば、激戦7州の内、特にペンシルベニア州の選挙は「マージンのゲーム」になる。ほんの僅かの票でも積み上げた方が勝利するという認識を示したのだ。ヘイリー票、黒人男性票およびヒスパニック票の積み上げは、トランプとの僅差の勝負には不可欠なのだ。
僅かな票の積み上げを狙うハリス陣営は、どのようにして投票率を高めようとしているのか。
10月10日に行われたペンシルベニア州のハリス陣営と支持者とのオンラインミーティングで、同陣営は戸別訪問が投票率を8%~10%高めると説明した後、支持者に対して、その場で投開票日までの戸別訪問の日程表に、自分が戸別訪問を実施できる時間帯にマークを入れるように促した。ハリス陣営の投票率アップの有効な戦略の柱は、激戦7州におけるボランティアの運動員による地上戦、即ち戸別訪問の強化だ。
また、同月14日のウィスコンシン州のハリス陣営と支持者とのオンラインミーティングで、同陣営は、すでに構築された人間関係のネットワークが投票率を高めると述べた。同陣営によると、有権者は政治広告よりも、家族や兄弟、友人、同僚の意見に耳を傾け信じる傾向があると言う。
ハリス陣営は、オンラインミーティングにおいて、2020年米連邦上院議員選挙でジョン・オソフ上院議員(民主党・ジョージア州)の陣営が、人間関係のネットワークを通じて、投票率を3.8%向上させた例を紹介した。また、同陣営は2018年の米コロンビア大学のデータ科学研究所の研究で、有権者が人間関係のネット―ワークを使えば、投票率が8.3%上がることを突き止めたと説明した。
さらに、ハリス陣営のスタッフは、2019年の非営利団体で無党派のターンアウト・ネーションの西部カリフォルニア州、コロラド州、東部コネチカット州および中西部オハイオ州を対象にした研究では、13.2%の投票率アップが見られたと述べた。陣営のスタッフが支持者をサポートすれば、さらに17.1%まで高まるとも説明した。
ハリス陣営は戸別訪問を核とした地上戦に加えて、人間関係のネットワークを通じて、確実に票を獲得する戦略を打っている。
トランプとハリスは、激戦7州をどのようにして獲得しようとしているのか。
トランプは、共和党が強い赤い州(赤は同党のカラー)に加えて、激戦7州の内、ジョージア州とノースカロライナ州の2州をとれば、ハリスに王手をかけることができる。赤い州とこの2州の選挙人の合計に、ペンシルベニア州の選挙人19を加えると、過半数の選挙人270になるからだ。
仮にそうなれば、アリゾナ州とネバダ州の勝敗は関係ないことになる。おそらくトランプは、この最短距離の「勝ちパターン」を最優先にしている。
一方、ハリスは民主党が強い青い州(青は同党のカラー)に、中西部ネブラスカ州第2選挙区の選挙人「1」(通称ブルー・ドット)と、ウィスコンシン州およびミシガン州をとれば、トランプに王手をかけることになる。それらの州の選挙人にペンシルベニア州の選挙人19を足すと、こちらも選挙人の合計が270になり、勝利するからだ。ハリスが最も重視しているのが、この「勝ちパターン」だ。
ということは、トランプとハリスの勝敗の鍵を握る共通の州はペンシルベニア州になり、同州が決定的な結果をもたらす可能性が高くなる。ハリスとトランプは選挙戦最後の演説をペンシルベニア州で行うかもしれない。
ハリスがノースカロライナかジョージアのどちらかの州で勝利すれば、流れはハリスに傾く。というのは、彼女に選択肢が生まれるからだ。ペンシルベニア州を落としても、ノースカロライナ州とネバダ州ないし、ジョージア州とネバダ州の組み合わせで補える。それぞれの選挙人の合計が22(16+6)になり、ペンシルベニア州の選挙人19を上回るからだ。
もちろん、ノースカロライナ州とアリゾナ州ないしジョージア州とアリゾナ州の組み合わせもあるのだが、目下のところ、ハリスはアリゾナ州よりもネバダ州で勝つ可能性が高い。
いずれにしても、トランプはジョージア州、ノースカロライナ州とペンシルベニア州、一方、ハリスはウィスコンシン州、ミシガン州とペンシルベニア州を獲得できるかが勝利の鍵となると言える。