2022年、盤石といえる強さでセ・リーグ2制覇を果たした髙津ヤクルト。主力、ベテラン、若手がそれぞれの役割を果たし、まさにチーム一丸となって勝利をもぎとった。
追われる立場の今シーズン、髙津監督はどんなビジョンを持ち、ここからどのようにチームを進化させていくのか。本連載では、今年もインタビュアーに長谷川晶一氏を迎え、髙津監督の組織論から、マネジメント術、若手育成術まで余すところなくお届けしていく。
(インタビュアー:長谷川晶一)
――5月は苦しい時期が続きました。交流戦前から、なかなか勝利に恵まれずにまさかの12連敗を喫しました。この間はひたすら我慢の時期となりましたが、どのような心境だったのでしょうか?
髙津 この間は、打線のつながりが悪いというか、投打の歯車がかみ合わないというか、全体的にいろいろなことがうまく回っていませんでした。僕たちは、チームであり、組織なので、そこをしっかりまとめていかなきゃいけないと強く思っていましたし、投げる方も、打つ方も、走る方も、守備ももちろん、すべてにおいて積極的にプレーすることがすごく大事だと考えていましたけど、なかなかうまくいかなかったというのが正直な思いでした。
――順調なときは何をやってもいい結果がもたらされる半面、苦境にあるときには、いろいろなことが裏目、裏目に出てしまう怖さを痛感しました。
髙津 連敗期間中には大きなミス、小さなミスがたくさんありました。そういうミスをしていると、なかなか点が取れないし、次の1点が防げない。確かに、そういう状態だったと思います。そんなときだからこそ、「できることはしっかりやる、できないことを努力してできるようにする」という気持ちは大切だと考えて、日々の試合に臨んでいました。
――ファンの間でも、「こんなときだからこそじっと我慢して見守ろう」という考えの人と、「叱咤激励もファンの役割だ」と考えて、SNS上で監督や選手の批判をするファンも、一部では見受けられました。
髙津 プロ野球の世界ですから、ファンの方は自由に感想を述べて構わないと思います。それに、勝って喜ぶこと、負けて悔しがることはすごく大事だと思います。野村克也監督は、「一喜一憂しちゃいけない」と、よく言っていました。「今はよくても、その次にはまた違うことが待っているし、今年勝っても来年勝てるかどうかの保証もないし、そのときは嬉しいかもしれないけど、その先のことをよく考えろ」と言われていました。でも、僕はどちらかというと、やっぱり勝ったら嬉しいし、もしやられたら「クソー」って悔しがっていいと思っています。ファンの方たちはもちろん、選手たちも、うまくいけば喜べばいいし、うまくいかなかったら「チクショー」となるのは人間の素直な部分であり、僕はそういう感情は出してもいいと思っています。一個人を攻撃するような内容は良くないと思いますが。