2023ヤクルト髙津流 躍動の燕マネジメント

髙津流「失敗」を「成功」に変える考え方
大切なのは「負けた」という結果だけで終わらないこと

2022年、盤石といえる強さでセ・リーグ2制覇を果たした髙津ヤクルト。主力、ベテラン、若手がそれぞれの役割を果たし、まさにチーム一丸となって勝利をもぎとった。
追われる立場の今シーズン、髙津監督はどんなビジョンを持ち、ここからどのようにチームを進化させていくのか。本連載では、今年もインタビュアーに長谷川晶一氏を迎え、髙津監督の組織論から、マネジメント術、若手育成術まで余すところなくお届けしていく。

(インタビュアー:長谷川晶一)

――5月も終わろうとしていますが、現状は厳しい日々が続いています。ここまでの戦いをどのように振り返りますか?

髙津 確かに、勝ち越しているわけでもないし、上位にいるわけでもないし、成績はあまりよくないですけど、それでも「よく頑張っている、よく踏みとどまっている」とは思います。「もっともっとやらなくちゃいけない、もっとできるはずだ」という思いの一方で、「みんなよく我慢して頑張っているな」とも思っています。

――それは、ここまで故障者や離脱者がいる中で、試合に出ている選手たちが奮闘を続けているということでしょうか?

髙津 そうです、まさにその通りですね。みんな100点満点は目指しますけど、常に打てるわけでも、常にいいピッチングができるわけでもないです。野球というのは、そうそううまくいくスポーツではないので、失敗したときに、はたしてそれをどうやって成功に変えるのかとか、うまくいったときに、はたしてそれを継続できるかということがすごく大事だと思います。負けたら腹も立つし、打たれたら悔しいし、打てなかったら残念に思うのは間違いないけど、それだけで終わってほしくないというのが正直な思いです。前も言いましたけど、「せっかく負けた」のならば、勝つためのエネルギーにしてほしいと思います。

――「失敗したときに、それを成功に変える」ために意識すべきこと、注意すべきことはありますか?

髙津 いちばん気をつけなきゃいけないのは、「投げやりにならないこと」だと思います。やっぱり、冷静に現状、現実を見つめて、「何が足りないのか?」「どうすべきなのか?」ということをきちんと理解しないと、必ず同じミスを犯します。理解していても同じミスをすることもあります。それは、必ず成長の妨げになるので、イヤなこと、満足できないことがあっても、しっかり結果としてとらえて、「次はどうしていくか?」という気持ちになること、人の意見も参考にすること、行動していくことが大事だと思います。

――逆に「うまくいったときに、それを継続させる」ためのポイントはありますか?

髙津 うまくいったときの継続についても同じだと思いますね。やっぱり、勉強ですよ。勉強しなければダメですね。勉強というのは、研究、復習、いつも言っていますけど、「打てたからよかった」だけで終わることなく、「どんなボールが、どんな配球できて、どこに飛んでいったのか?」というところまで深掘りして、「次に同じようなボールが来たら?」「次は違うボールが来たら?」というところまで研究することが大切だと思います。

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プロフィール

髙津臣吾
髙津臣吾

1968年広島県生まれ。東京ヤクルトスワローズ監督。広島工業高校卒業後、亜細亜大学に進学。90年ドラフト3位でスワローズに入団。93年ストッパーに転向し、20セーブを挙げチームの日本一に貢献。その後、4度の最優秀救援投手に輝く。2004年シカゴ・ホワイトソックスへ移籍、クローザーを務める。開幕から24試合連続無失点を続け、「ミスターゼロ」のニックネームでファンを熱狂させた。日本プロ野球、メジャーリーグ、韓国プロ野球、台湾プロ野球を経験した初の日本人選手。14年スワローズ一軍投手コーチに就任。15年セ・リーグ優勝。17年に2軍監督に就任、2020年より現職。

著書

明るく楽しく、強いチームをつくるために僕が考えてきたこと

明るく楽しく、強いチームをつくるために僕が考えてきたこと

髙津臣吾 /
2021年、20年ぶりの日本一へとチームを導いた東京ヤクルトスワローズ髙津臣吾監...
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