2020シーズン、未曽有の事態に見舞われる中で、リーグ最下位という悔しい結果に沈んだ東京ヤクルトスワローズ。今季は心機一転、投手陣の補強を最優先に掲げ、再起を誓う。
昨シーズンを踏まえ、「今年はさらに厳しくいく」と宣言する2年目の高津監督は、新戦力が加わった新たなスワローズをどのように変革し、リーグ制覇を目指していくのか。
本連載では、今年もインタビュアーに長谷川晶一氏を迎え、高津監督の組織論から、マネジメント術、若手育成術まで余すところなくお届けしていく。
(インタビュアー:長谷川晶一)
――前回も伺いましたが、阪神との開幕3連戦はまさかの3連敗を喫し、その直後には青木宣親、内川聖一、川端慎吾といったベテラン選手が新型コロナウイルスの濃厚接触者として自宅待機を余儀なくされました。それでも、残された戦力で戦い5割を死守。この間のチームの雰囲気はどうだったのでしょうか?
高津 最初の15試合までは本当にいろいろなことがありました。開幕3連敗を喫して、大変なときに主力がゴッソリと抜けてしまいました。当然、つい下を向きがちなムードにはなりましたね。でもその時点で、残された選手が「今こそ、やらねば」という形で一致団結したのも事実でした。この間は、「よく頑張ったな」というゲームもあれば、「もっといけたはずだ」と反省すべき試合もありましたね。
――どんな仕事においてもリスクマネジメントは重要です。新型コロナウイルス禍という未曽有の事態において、監督はどのような危機管理を意識してシーズンに臨み、そして今、戦っているのでしょうか?
高津 当然、コロナ禍では何が起こるかわからないということは、常に意識しています。もちろん、誰かが故障するケースもあり得ます。とは言え、「彼はケガをするだろう」などと考えて選手起用する監督はいません。主力選手が抜ければ、当然チーム力は落ちます。開幕直後に青木と内川が抜けたことで、チーム力は落ちたのも事実です。でも、そんなときに「ここで青木がいれば……」などと考えることは一度もなかったですね。
――それはどうしてでしょうか?
高津 僕自身の元々の性格が「いないものはいないんだから仕方がない」と考えるタイプだからというのもあります。それに、今は一軍に16人の野手がいるけど、僕にとっては16人すべてが大切なメンバーです。確かに、青木や内川の離脱は痛いけれども、今、目の前にいる16人の前で、「青木がいれば……、内川がいれば……」と考えるのは、目の前の選手たちに失礼だと思うからです。
――現有戦力でベストを尽くす。そんな考えが根底にあるのでしょうか?
高津 そうですね。今できることをやる。できないことはできるように努力する。今いる戦力で100点を目指す。楽観的に聞こえるかもしれないけど、「どんなときでも、今のチームがベストのチームなんだ」という思いは持つようにしています。