いまだ記憶に新しい2017シーズンの屈辱的な戦績。ドン底まで低迷したチームを立て直すべく舞い戻った小川監督は、宮本慎也ヘッドコーチを要に据えたチーム改革を断行した。ハードワークに見られる「厳しさ」の追求は、選手達の意識をどのように変え、チームにどんな変化をもたらしているのか――。インタビュアーにライター長谷川晶一氏を迎え、小川監督のスワローズ改革に迫っていく。
(インタビュアー:長谷川晶一)
――2位通過で臨んだクライマックスシリーズもファーストステージで敗退。しかし、前年のチームワーストとなる「96敗」から、今季は貯金9への大躍進。長いシーズンでしたね。
小川 去年、僕はシニアディレクター(SD)として、スタンドから選手たちの戦いぶりを見ていました。その姿を見ていると、闘争心が欠けていたというのは明らかだったと思います。人間だから、あれだけ負けが込むと、そうなるのも仕方ないのかもしれないけれど、戦う前から、そんなことでは絶対にいけない。技術うんぬんの前に、「まずはそういう精神面から変えていこう」と考えて、宮本慎也をヘッドコーチに招聘しました。それが、すべての始まりだったと思います。
――宮本ヘッドの招聘による意識改革は達成できたとお考えですか?
小川 去年の秋のキャンプから宮本ヘッドはチームに合流したんですが、そのとき、彼には「質も大事だけど、まずは量をこなして、いろいろなことに取り組んでほしい」と注文を出しました。その結果、選手にとっては本当に厳しいキャンプになったと思います。でも、それが意識を変えるきっかけになったような気がします。
――どうして、「きっかけ」となったのか詳しく教えていただけますか?
小川 秋のキャンプは基本的には若い選手を集めて、徹底的に鍛えました。そして、それが報道されたことで、秋季キャンプに参加していなかったベテランたちにも、そのことが伝わって、春のキャンプに臨む姿勢が変わったと思うんです。そして、春のキャンプでは多少の気は使っても、基本的には若手も、ベテランも、レギュラーも、特別扱いはしませんでした。こうして全日程をこなして、オープン戦を経て、「一球への執念」を持ったままペナントレースに臨んでいく。それもすべては秋のキャンプで「厳しさ」を前面に出したところから始まったのだと思います。
――まさに、宮本ヘッドを招聘した成果が出たということですか?
小川 そういうものは出たんじゃないかと思います。これは前回監督を務めたとき(2011~14年)の反省から来ています。このときは「厳しさ」は足りなかったと思います。だから、今回監督を引き受けるにあたって、前回とは違ったアプローチを考えたときに、僕にはないものが必要だと思って彼を呼びました。その成果は出たと言えると思います。