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おい、おい、おい リーストファー視点

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俺の昔の話を聞きたいと、地面に座ったミシェルに促されるように俺とルイスも座った。

『どのようなお話を聞かせて頂けるんですか?どうせなら幼い頃からお聞きしたいです。後、どれだけ女性に人気だったのか、本音を言えば聞きたくはありませんが、妻としてお聞きしたいです』

ミシェルは目をキラキラさせてルイスに話しかけていた。

『やっぱり聞いて妬いてしまうかも…。でも聞いてみたい、あぁんどうしましょう』

一人でどうしようどうしようと言っているのを俺とルイスはただ見ていた。

『覚悟は決まりました。どうぞお聞かせ下さい』

何の覚悟かよく分からないが、そもそも覚悟しないと聞けないような話はない。

ルイスが話そうとした時、『奥様、湯浴みの時間です』ニーナがミシェルを呼びに来た。

ミシェルとニーナは毎日湯を浴びに辺境伯の邸に行く。辺境伯は客室を用意してくれた。『女性を天幕で寝かせるなど以ての外だ』と。だがミシェルは『でしたら湯浴みだけお願いできないでしょうか。私は愛しい人の側を離れたくないのです』湯浴みだけ邸に行くようになった。

『ルイス様、すぐに湯を浴びて帰って来ますので、帰ってくるまでお待ち頂けますか?私、お聞きするまで寝るに寝れません。それはもう気になって気になって…。

もしこのままルイス様がお帰りになられたら、私、変な想像をしてしまいます。もしかしたら夫婦の危機になってしまうかも…。

なので少々お待ち下さいね』

ルイスはミシェルの迫力に負けた。

『分かったから行ってこい』ルイスの言葉を聞いたミシェルは笑顔を見せた。

『では行って来ますね。あ、そうだ、それまでお二人で積もるお話もおありでしょう?お酒でも飲みながら話に花を咲かせてはどうですか?』

と、元気に手を振って辺境伯の邸へ歩いて行った…。

ミシェルが行き、沈黙が流れた。

シャルクが酒を持ってきて、俺もルイスもとりあえず飲んだ。


おい、おい、おい、俺は何を話せば良いんだ。

このままルイスと二人きりにされても、どうしろと言うんだ。

なぁミシェル、引き留めるだけ引き留めて自分はさっさと退散か?

はあぁぁ…


「元気か?」


仕方がないと、当たり障りない事を聞いた。


「まあ元気だな。お前は?」

「俺もまあ元気だ」

「そうか」


ほら終わっただろ。俺にどうしろと言うんだ。ルイスも困った顔をしているだろ。

お互い沈黙は気まずく、何を話そうかとお互いを探る。


「お前の奥さんは変わり者だな」

「そうか?まぁ確かに少し首を突っ込みたがる所はあるかもな」

「少し?少しじゃないだろ、全てに首を突っ込むだろ。お節介というか親切というか」

「お節介も親切も紙一重だからな。親切と思うか、お節介だと思うのかは受ける側次第だ。それでも他人の為に心を痛めたり悲しんだり怒ったり、迷わず手を差し伸べるのは簡単に見えて簡単に出来ることじゃない。それも恩着せがましくする訳じゃなく、それが当然だと迷いがない。

なぁルイス、本当の強さは赦す心だと思う。大切な者の死ほど赦せないのは当然だ。どれだけやり直し更生したからと、今は真面目だからと言われても、死んだ者は生き返らない。共に過ごした記憶があり、笑った顔も怒った顔も泣いた顔も今も鮮明に覚えている。

皆でくだらない話をして笑ったよな。こうして酒を飲んで騒いだよな。

なぁルイス、その時の記憶は今でも鮮明に思い出せる。エリオとライドがいっつも喧嘩して、レイが笑わかせて、イルクが『仲良くしようよ』って泣いて、アースが『いい加減にしろ』って怒って、あの頃は毎日楽しかったよな。

だけどな、あいつ等の笑顔も色々な顔も思い出せるのに、どんな声だったか、だんだん思い出せないんだ。あいつ等の声をもう一度聞くことが出来ないのに、…………俺はあいつ等の声をもう一度聞きたい……。

それが俺達は生きてるって事なのかもしれないな…。

記憶の中でしかあいつ等とは会えず、あいつ等の姿や過ごした思い出は、これからも思い出し思いを馳せる。声のない残像だけが俺達に残り続ける。

それでも今生きてる俺達はこれからも生きていかないといけない。これからも生きていく為に弱さを隠し、言葉では赦すと言っても心の芯の部分は隠し通す。虚勢を張ってでも、偽り続けても、それでも誰かと生きるには必要なんだと思う。

いつか、死ぬまでには、赦せれる強い人に俺はなりたい」

「俺はまだそこまでは思えない。でも、死ぬまでにはそうなれるようになりたいとは思う。

今はお前の奥さんだと認めるだけしか、悪いな」

「充分だ」


久しぶりにこうしてゆっくり話が出来た。穏やかに、昔の頃のように、ルイスと話が出来た。

痛みも、喪失感も、俺達にしかきっと理解は出来ないだろう。お互いの心の芯の部分は同じ。

俺達二人が生き残った意味があるとすれば、俺以外にも俺を本当の意味で理解してくれる者が一人いる、それだけで一人じゃないと思える。薄れゆく記憶を一人で抱えるのではなく、二人なら鮮明に記憶を残し続けられる。

そうだろ?テオン…

そうだろ?みんな……


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