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【続編】

68:これ以上、気持ちを煽ってはいけない

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魔法を使ったことがロレンソにバレたと気づく。
でもどうして、バレたの?
魔力を鳥の形に変え、空に放った時には気づかれていなかった。その時から何時間も経っている。その間のロレンソに変化は何もなかったのに。

「……!」

ロレンソの唇が首筋に触れ、思わず小さく声が漏れる。掴まれた手首を解こうと暴れている間にも首筋へのキスが繰り返され……。

逆鱗の反応、繰り返される首筋へのキス、手首の拘束を逃れようと体を動かすことで。心臓は信じられないほどバクバクし、全身が熱くなり、当然だが呼吸がどんどん荒くなる。

「ロレンソ先生、お願い、止めてください」
「止めるわけにはいきません。パトリシア様、あなたは約束を破ったのだから」

荒い息遣いになり、自分の中から魔力が失われていくと思うと、さらに焦りで鼓動が早くなる。

今朝、魔力を鳥の形に変えた。そのために相応の魔力を使っている。グレイシャー帝国とガレシア王国は遠いのだから。魔力を込めないと、アズレークの元までメッセージは届けられない。

つまり既に私の魔力は残り少ない。その上で、こんなに息を乱したら……。完全に魔力切れになってしまう。

勿論、眠れば魔力は回復するだろうが、魔法を使ったとバレた今、何をされるか分からない。もしもに備え、魔法を使える状態にしておきたい。

逆鱗の反応は自分の意志ではコントロールしきれない。繰り返される首筋へのキスは……ロレンソがしていることだ。そしてロレンソは止めるつもりはない。それならば……。

くらくらする頭で必死に考えた結果。

少しでも荒くなる息遣いを抑えようと、手首の拘束から逃れることを諦めた。暴れるのをやめ、全身から力を抜いたのだ。

突然動くのを止めたので、驚いたのだろう。
ロレンソのオッドアイの瞳と目があった。
心臓がドクンと大きく反応する。

せっかく暴れるのを止めたのに、心臓は今まで以上に急速に鼓動していた。

慌ててロレンソから目を逸らす。

私の呼吸を乱すため、ロレンソは何度も私の首筋にキスを繰り返していた。そして私は逆鱗の反応もあり、どんどん息遣いが荒くなっていたのだ。それを見て私に好意を寄せるロレンソが、無反応でいられるわけがない。

彼の瞳には私を求める気持ちが溢れ、頬はうっすらと赤みを帯びていた。

それを見てしまい、私の心臓が激しく反応してしまったのだ。

魔力を失うわけにもいかないし、ロレンソの気持ちをこれ以上煽るのだって、危険だ。逆鱗の反応を魔法でなんとか抑えたい……!
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