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【続編】

67:思わずドキッとしたその瞬間

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あと2日待てばアズレークに会える。
それを待てばいい……?

いや。待っているのではダメなんだ。
アズレークとロレンソが相まみえたら、それは戦闘になるのだから。
そう思ったが。
もし今回。
私が上手いことここから抜け出し、ロレンソと会う前のアズレークと合流でき、ガレシア王国に戻れたとして……。それで終わりにはならない。こちらがロレンソを避けても、彼の方から私達に会いに来るだろう。そして王宮付きの魔術師であるアズレークは、どこかに身を隠すわけにはいかない。

そうなると、どうしてもロレンソと対峙し、戦闘するしか道がない……。回避はできない。

違う、戦闘ではない、何か別の方法を……。

考え、でもこれという名案は浮かばないまま、自分がのぼせそうになっていることに気づき、慌てて温泉から上がることになった。

その後は髪は洗い流し、脱衣所に向かうと……。
そこには召使いが待っていてくれて、髪を乾かし、ドレスに着替えるのを手伝ってくれた。用意されていたドレスは、真っ白な長袖のシュミーズドレスで、胸元がふわふわとした毛で飾られ、生地も厚手で温かい。

着替えた後に案内されたのはサンルームだった。ガラス窓に囲まれたその部屋は、天井から太陽の陽射しがサンサンと降り注いでいた。そこにローソファが置かれ、そこに寝そべり日光浴ができるようになっている。

昼間の温泉を楽しんだ後、ここで寝そべって体を休めることができるというわけか。しかも私がそこで体を伸ばすと、ハーブティーが運ばれ、水分補給もしっかりできた。

なんというか。ロレンソの妃となったらこんな風に過ごせると疑似体験をさせられているようだ。そしてこんな風に過ごせるのはかなり快適に思える。だからと言ってロレンソの妃に収まるつもりはないのだが。

カチャという音に体を少し起こすと、サンルームにロレンソが入ってきた。白銀色のマントをはためかせ、ツカツカとこちらへ歩いてきたロレンソは、そのまま横たわる私のそばに腰を下ろした。

「パトリシア様」

ロレンソの白銀色と白金色の瞳が私を咎めるように見つめている。思わずドキッとしたその瞬間。おへその下の逆鱗に触れられ、両手首を掴まれた。

「魔法は使わない、と約束したはずでは?」

逆鱗を起点に血流の流れよくなり、心臓がドキドキし始めた上に、今の一言で、一気に全身が熱くなる。

気付かれたんだ……!
魔力を鳥の形に変え、空に放ったことがバレてしまったと瞬時に悟った。
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