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86:私のこと、好きだと思う?
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どうやら魔法が使えるらしいと分かった私が、まずしようとしたこと。
それは、スノーを人間の姿に変身させることだ。
だからアフタヌーンティーを終え、アルベルトと三騎士に部屋まで送ってもらうと。
ソファでおとなしくしているスノーに、声をかけた。
「スノー、話があるの。ちょっといいかしら?」
スノーはちゃんと私の言葉が分かるようで、すぐさまソファから降り、私の足元に駆け寄る。その体を持ち上げ、ぎゅっと抱きしめ、魔法が使えるようになったと報告する。するとスノーは、ミニブタとは思えない表情で、驚きを示す。
「それで、スノーを人間に変身させることができないか、試そうと思うの」
そう言った瞬間、スノーが激しく暴れ出した。
いつもおとなしく抱っこされているので、驚いてしまう。
「ちょ、どうしたの、スノー」
スノーは絨毯の上に降りると、そのままソファの下に隠れてしまう。
「え、もしかして人間になりたくないの?」
ソファの下をのぞきこみながら尋ねる。
するとスノーはぶんぶんと首を横に振る。
人間になりたくないわけではない。
それなのになぜ隠れたのか。
しばらく考え、再度、ソファの下をのぞく。
「もしかしてスノー、人間に変身させるための魔法って、難しいの?」
ものすごい勢いで、スノーが首を縦にふった。
なるほど。
駆け出しの私が使うような魔法ではないのか。
もし失敗すれば、スノーは中途半端な姿に変身してしまうのかもしれない。
「分かったわ、スノー。人間の姿には、王都に戻ってから、ちゃんとアズレークに……レオナルドに教えてもらう」
この言葉に安心したのか、スノーがソファの下から出てきた。そして私の膝に乗ろうとする。
その体を抱っこし、ソファに座る。
夕食までの時間は、明日の王都への出発に向け、荷造りする必要があった。スノーの分もあるから、相応に時間は必要だが……。
少しだけ、スノーとおしゃべりタイムをすることにした。
「ねえ、スノー、王都についたら、アズレークは……魔術師レオナルドは、私に会ってくれるかしら?」
スノーは「会ってくれますよ!」という感じで頷く。
「会ってくれたとして……魔法を教えてくれるかしら?」
「もちろん!」と言いたげに口を動かし、頷いてくれた。
この反応を見るにつけ、スノーは彼のことが大好きなのだと分かる。
「ねえ、スノー、アズレークは……レオナルドは、私のこと、好きだと思う?」
私と過ごすアズレークの姿を見ていたスノーの意見を、聞きたいと思った。するとスノーは、ピョンと私の膝から降りると、すたすたとテーブルの方へ歩いて行く。そしてテーブルの上をじっと見る。
テーブルには食べ物などなく、ただ花が飾られているだけだ。
「……まさか、この花を食べたいの?」
「とんでもない」とばかりにスノーが首を横に振る。
前足をあげ、懸命に何かをアピールしている。
再度、テーブルの上を眺め、首を傾げた私は、そこでようやく気づく。
花瓶に飾られているのは、赤とピンクのビオラの花だ。
ピンクのビオラは、アズレークが魔法で私の髪に飾ってくれた花。
――「『私のことを想って』『信頼』『少女の恋』ですよ、オリビアさま」
スノーの言葉を思い出す。
ピンクのビオラの花言葉を。
アズレークがもし『私のことを想って』と、ピンクのビオラを、あの時、髪に飾ってくれたのなら……。私が自分の番(つがい)だと気づいていて、でも私の気持ちはアルベルトにあると思い、密やかに花言葉で自身の想いを伝えていたなら……。
あの時のアズレークの顔を思い出し、胸がキュンとした。
それは、スノーを人間の姿に変身させることだ。
だからアフタヌーンティーを終え、アルベルトと三騎士に部屋まで送ってもらうと。
ソファでおとなしくしているスノーに、声をかけた。
「スノー、話があるの。ちょっといいかしら?」
スノーはちゃんと私の言葉が分かるようで、すぐさまソファから降り、私の足元に駆け寄る。その体を持ち上げ、ぎゅっと抱きしめ、魔法が使えるようになったと報告する。するとスノーは、ミニブタとは思えない表情で、驚きを示す。
「それで、スノーを人間に変身させることができないか、試そうと思うの」
そう言った瞬間、スノーが激しく暴れ出した。
いつもおとなしく抱っこされているので、驚いてしまう。
「ちょ、どうしたの、スノー」
スノーは絨毯の上に降りると、そのままソファの下に隠れてしまう。
「え、もしかして人間になりたくないの?」
ソファの下をのぞきこみながら尋ねる。
するとスノーはぶんぶんと首を横に振る。
人間になりたくないわけではない。
それなのになぜ隠れたのか。
しばらく考え、再度、ソファの下をのぞく。
「もしかしてスノー、人間に変身させるための魔法って、難しいの?」
ものすごい勢いで、スノーが首を縦にふった。
なるほど。
駆け出しの私が使うような魔法ではないのか。
もし失敗すれば、スノーは中途半端な姿に変身してしまうのかもしれない。
「分かったわ、スノー。人間の姿には、王都に戻ってから、ちゃんとアズレークに……レオナルドに教えてもらう」
この言葉に安心したのか、スノーがソファの下から出てきた。そして私の膝に乗ろうとする。
その体を抱っこし、ソファに座る。
夕食までの時間は、明日の王都への出発に向け、荷造りする必要があった。スノーの分もあるから、相応に時間は必要だが……。
少しだけ、スノーとおしゃべりタイムをすることにした。
「ねえ、スノー、王都についたら、アズレークは……魔術師レオナルドは、私に会ってくれるかしら?」
スノーは「会ってくれますよ!」という感じで頷く。
「会ってくれたとして……魔法を教えてくれるかしら?」
「もちろん!」と言いたげに口を動かし、頷いてくれた。
この反応を見るにつけ、スノーは彼のことが大好きなのだと分かる。
「ねえ、スノー、アズレークは……レオナルドは、私のこと、好きだと思う?」
私と過ごすアズレークの姿を見ていたスノーの意見を、聞きたいと思った。するとスノーは、ピョンと私の膝から降りると、すたすたとテーブルの方へ歩いて行く。そしてテーブルの上をじっと見る。
テーブルには食べ物などなく、ただ花が飾られているだけだ。
「……まさか、この花を食べたいの?」
「とんでもない」とばかりにスノーが首を横に振る。
前足をあげ、懸命に何かをアピールしている。
再度、テーブルの上を眺め、首を傾げた私は、そこでようやく気づく。
花瓶に飾られているのは、赤とピンクのビオラの花だ。
ピンクのビオラは、アズレークが魔法で私の髪に飾ってくれた花。
――「『私のことを想って』『信頼』『少女の恋』ですよ、オリビアさま」
スノーの言葉を思い出す。
ピンクのビオラの花言葉を。
アズレークがもし『私のことを想って』と、ピンクのビオラを、あの時、髪に飾ってくれたのなら……。私が自分の番(つがい)だと気づいていて、でも私の気持ちはアルベルトにあると思い、密やかに花言葉で自身の想いを伝えていたなら……。
あの時のアズレークの顔を思い出し、胸がキュンとした。
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