87 / 251
87:あの件、分かったぞ
しおりを挟む
ついに。
王都へ向け、プラサナス城を出発することになった。
アルベルトが用意してくれたスカイブルーのドレスは、繊細な刺繍とレースが施され、とても美しい。きっとこのドレスにあう服装を、アルベルトもしているのだろうと思ったが……。
エントランスを抜けると、そこには白馬に跨るアルベルトの姿が見えた。
白シャツにスカイブルーの上衣、同色のズボン。毛皮のついた蒼いマントには、背中に王家の紋章が刺繍されている。黒革のロングブーツが全体を引き締め、惚れ惚れする姿だ。
彼の三騎士たちもいつもの軍服にマント姿で、それぞれの馬に乗り、出発の時を待っている。
領主ヘラルドは沢山のお土産を用意し、それはトランクに入りきらなかった。するとわざわざトランクを用意してくれて、トランクも含めお土産として持たせてくれた。そのトランクは、私が乗るために用意された馬車の屋根に、括り付けられている。
スノーと私がその馬車に乗り込むと、出発となった。
沢山の人に見送られ、城の正門に向け、スロープを下っていく。
美しいプラサナス城を窓に見ながら、正門を抜けた。
◇
プラサナス城から王都までは、夜を徹して進めば、一日でつく。
王都へ早く戻りたい気持ちもあるが、夜道は決して安全とは言えない。何より私を連れている。つまり令嬢を伴うことから、途中の旅籠で一泊し、そして翌日のお昼過ぎには到着するよう日程が組まれた。
もちろん、馬を休息させる必要もあるから、王都への旅はゆったりと進む。
途中立ち寄った休息所では、お菓子をいただいたり、美しい花をプレゼントされたり。
少し栄えた町を通り抜ける時は、王太子見たさに集まった町の人々により、なかなか先に進めないこともあった。
そんな感じで夕方、一番星が夕空に姿を現した頃、旅籠に到着した。
私達が滞在した旅籠以外にも、宿はいくつかあった。でもどれもそこまで大きくはなく、私達が滞在する旅籠は、貸し切りになっている。アルベルトは、たまには皆と食事をしようと、提案した。その結果、一階の食堂に、この視察に同行したすべての騎士が集まり、食事が始まった。
ドルレアン家の息のかかった騎士は三人いた。この三人は、腰に巻かれたロープでつながれていたが、そんな彼らでさえ、この食事の席での同席が許された。さすがにお酒を飲むことは許されなかったが、それでも皆と同じ食事を与えられている。
アルベルトのその寛大な配慮に、捕えられた三人の騎士の目には、涙が浮かぶ。
そんな大勢での食事を終え、部屋に戻り、入浴の準備を進めていると……。
ドアがノックされた。
やってきたのはマルクスで、部屋に入るなりこう告げた。
「パトリシアさま、番(つがい)であるかをどうやって確認するか。その件、分かったぞ」
「!? いつの間に調べたのですか? 文献は……王都にある王宮図書館にあるのでは!?」
暖炉の前のソファに座りながら、マルクスは話を続ける。
「休憩で立ち寄った村があっただろう。小さな村だが、整った村だと思わなかったか?」
そう言われると、丁度15時の休憩で立ち寄った村は、美しい村だった。
まず建物に統一感があり、住民の服装もきちんとしていた。旅人を迎えるための施設もちゃんとあり、周囲の森や田畑の手入れも、行き届いていた。
「あの村は、ニルスの村と言われている。かつてニルスという強い魔力の持ち主がいて、彼が切り拓いた村だ。そしてあの村の住人は、ほぼ全員が魔力を持つ。つまり魔法使いの人間が暮らしている村だ。それを思い出し、もしやと思い、その村で休憩中に、本屋に足を運んでみた。すると、番(つがい)について書かれていた本もあった」
マルクスはそう言うと、胸元から一冊の本を取り出す。
クロス張りのその本は、美しい藍色をしている。
表紙には、金色の美しい文字が浮かび上がっていた。
「王都までの道中、馬車の揺れが落ち着いている時に、読んでみるといい」
「これはお借りしても?」
「貸すなんて野暮ったいことはしない。これはパトリシアさまに進呈する」
本を受け取り「ありがとうございます」とお辞儀すると、マルクスは呆気にとられている。
王都へ向け、プラサナス城を出発することになった。
アルベルトが用意してくれたスカイブルーのドレスは、繊細な刺繍とレースが施され、とても美しい。きっとこのドレスにあう服装を、アルベルトもしているのだろうと思ったが……。
エントランスを抜けると、そこには白馬に跨るアルベルトの姿が見えた。
白シャツにスカイブルーの上衣、同色のズボン。毛皮のついた蒼いマントには、背中に王家の紋章が刺繍されている。黒革のロングブーツが全体を引き締め、惚れ惚れする姿だ。
彼の三騎士たちもいつもの軍服にマント姿で、それぞれの馬に乗り、出発の時を待っている。
領主ヘラルドは沢山のお土産を用意し、それはトランクに入りきらなかった。するとわざわざトランクを用意してくれて、トランクも含めお土産として持たせてくれた。そのトランクは、私が乗るために用意された馬車の屋根に、括り付けられている。
スノーと私がその馬車に乗り込むと、出発となった。
沢山の人に見送られ、城の正門に向け、スロープを下っていく。
美しいプラサナス城を窓に見ながら、正門を抜けた。
◇
プラサナス城から王都までは、夜を徹して進めば、一日でつく。
王都へ早く戻りたい気持ちもあるが、夜道は決して安全とは言えない。何より私を連れている。つまり令嬢を伴うことから、途中の旅籠で一泊し、そして翌日のお昼過ぎには到着するよう日程が組まれた。
もちろん、馬を休息させる必要もあるから、王都への旅はゆったりと進む。
途中立ち寄った休息所では、お菓子をいただいたり、美しい花をプレゼントされたり。
少し栄えた町を通り抜ける時は、王太子見たさに集まった町の人々により、なかなか先に進めないこともあった。
そんな感じで夕方、一番星が夕空に姿を現した頃、旅籠に到着した。
私達が滞在した旅籠以外にも、宿はいくつかあった。でもどれもそこまで大きくはなく、私達が滞在する旅籠は、貸し切りになっている。アルベルトは、たまには皆と食事をしようと、提案した。その結果、一階の食堂に、この視察に同行したすべての騎士が集まり、食事が始まった。
ドルレアン家の息のかかった騎士は三人いた。この三人は、腰に巻かれたロープでつながれていたが、そんな彼らでさえ、この食事の席での同席が許された。さすがにお酒を飲むことは許されなかったが、それでも皆と同じ食事を与えられている。
アルベルトのその寛大な配慮に、捕えられた三人の騎士の目には、涙が浮かぶ。
そんな大勢での食事を終え、部屋に戻り、入浴の準備を進めていると……。
ドアがノックされた。
やってきたのはマルクスで、部屋に入るなりこう告げた。
「パトリシアさま、番(つがい)であるかをどうやって確認するか。その件、分かったぞ」
「!? いつの間に調べたのですか? 文献は……王都にある王宮図書館にあるのでは!?」
暖炉の前のソファに座りながら、マルクスは話を続ける。
「休憩で立ち寄った村があっただろう。小さな村だが、整った村だと思わなかったか?」
そう言われると、丁度15時の休憩で立ち寄った村は、美しい村だった。
まず建物に統一感があり、住民の服装もきちんとしていた。旅人を迎えるための施設もちゃんとあり、周囲の森や田畑の手入れも、行き届いていた。
「あの村は、ニルスの村と言われている。かつてニルスという強い魔力の持ち主がいて、彼が切り拓いた村だ。そしてあの村の住人は、ほぼ全員が魔力を持つ。つまり魔法使いの人間が暮らしている村だ。それを思い出し、もしやと思い、その村で休憩中に、本屋に足を運んでみた。すると、番(つがい)について書かれていた本もあった」
マルクスはそう言うと、胸元から一冊の本を取り出す。
クロス張りのその本は、美しい藍色をしている。
表紙には、金色の美しい文字が浮かび上がっていた。
「王都までの道中、馬車の揺れが落ち着いている時に、読んでみるといい」
「これはお借りしても?」
「貸すなんて野暮ったいことはしない。これはパトリシアさまに進呈する」
本を受け取り「ありがとうございます」とお辞儀すると、マルクスは呆気にとられている。
応援ありがとうございます!
11
お気に入りに追加
2,198
1 / 5
この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる