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87:あの件、分かったぞ

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ついに。

王都へ向け、プラサナス城を出発することになった。

アルベルトが用意してくれたスカイブルーのドレスは、繊細な刺繍とレースが施され、とても美しい。きっとこのドレスにあう服装を、アルベルトもしているのだろうと思ったが……。

エントランスを抜けると、そこには白馬に跨るアルベルトの姿が見えた。

白シャツにスカイブルーの上衣、同色のズボン。毛皮のついた蒼いマントには、背中に王家の紋章が刺繍されている。黒革のロングブーツが全体を引き締め、惚れ惚れする姿だ。

彼の三騎士たちもいつもの軍服にマント姿で、それぞれの馬に乗り、出発の時を待っている。

領主ヘラルドは沢山のお土産を用意し、それはトランクに入りきらなかった。するとわざわざトランクを用意してくれて、トランクも含めお土産として持たせてくれた。そのトランクは、私が乗るために用意された馬車の屋根に、括り付けられている。

スノーと私がその馬車に乗り込むと、出発となった。

沢山の人に見送られ、城の正門に向け、スロープを下っていく。
美しいプラサナス城を窓に見ながら、正門を抜けた。



プラサナス城から王都までは、夜を徹して進めば、一日でつく。
王都へ早く戻りたい気持ちもあるが、夜道は決して安全とは言えない。何より私を連れている。つまり令嬢を伴うことから、途中の旅籠で一泊し、そして翌日のお昼過ぎには到着するよう日程が組まれた。

もちろん、馬を休息させる必要もあるから、王都への旅はゆったりと進む。

途中立ち寄った休息所では、お菓子をいただいたり、美しい花をプレゼントされたり。

少し栄えた町を通り抜ける時は、王太子見たさに集まった町の人々により、なかなか先に進めないこともあった。

そんな感じで夕方、一番星が夕空に姿を現した頃、旅籠に到着した。

私達が滞在した旅籠以外にも、宿はいくつかあった。でもどれもそこまで大きくはなく、私達が滞在する旅籠は、貸し切りになっている。アルベルトは、たまには皆と食事をしようと、提案した。その結果、一階の食堂に、この視察に同行したすべての騎士が集まり、食事が始まった。

ドルレアン家の息のかかった騎士は三人いた。この三人は、腰に巻かれたロープでつながれていたが、そんな彼らでさえ、この食事の席での同席が許された。さすがにお酒を飲むことは許されなかったが、それでも皆と同じ食事を与えられている。

アルベルトのその寛大な配慮に、捕えられた三人の騎士の目には、涙が浮かぶ。

そんな大勢での食事を終え、部屋に戻り、入浴の準備を進めていると……。

ドアがノックされた。
やってきたのはマルクスで、部屋に入るなりこう告げた。

「パトリシアさま、番(つがい)であるかをどうやって確認するか。その件、分かったぞ」

「!? いつの間に調べたのですか? 文献は……王都にある王宮図書館にあるのでは!?」

暖炉の前のソファに座りながら、マルクスは話を続ける。

「休憩で立ち寄った村があっただろう。小さな村だが、整った村だと思わなかったか?」

そう言われると、丁度15時の休憩で立ち寄った村は、美しい村だった。

まず建物に統一感があり、住民の服装もきちんとしていた。旅人を迎えるための施設もちゃんとあり、周囲の森や田畑の手入れも、行き届いていた。

「あの村は、ニルスの村と言われている。かつてニルスという強い魔力の持ち主がいて、彼が切り拓いた村だ。そしてあの村の住人は、ほぼ全員が魔力を持つ。つまり魔法使いの人間が暮らしている村だ。それを思い出し、もしやと思い、その村で休憩中に、本屋に足を運んでみた。すると、番(つがい)について書かれていた本もあった」

マルクスはそう言うと、胸元から一冊の本を取り出す。
クロス張りのその本は、美しい藍色をしている。
表紙には、金色の美しい文字が浮かび上がっていた。

「王都までの道中、馬車の揺れが落ち着いている時に、読んでみるといい」

「これはお借りしても?」

「貸すなんて野暮ったいことはしない。これはパトリシアさまに進呈する」

本を受け取り「ありがとうございます」とお辞儀すると、マルクスは呆気にとられている。
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