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4話

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ポルコの家に着いてから、私はすぐに着替えさせられた。
メイド服だった。


(短い)


思わずスカートを抑える。
下手をすると下着が見えてしまいそうであった。


しゃがむときなどは気をつけないといけない。


父が借金を返し終わるまで。
私はここでメイドとして働くことになるようだ。


「あなたがフレデリカね。教育係のアリスよ!よろしく!」


私の前には、私と同じ年齢くらいの子がいた。
彼女も私と同じようにメイド服を着ていた。


どうやらここには私と同じ境遇の子がたくさんいるようだ。


「あなたにはここの掃除をしてもらう。私がやるから、真似してやってみて」


アリスに掃除のやり方を教えてもらう。
窓を拭き、床を磨く。


ポルコの屋敷はとても大きかった。
たくさんのメイドさんがいるけれど、それでもかなりの量だ。


一生懸命床を磨く。


大変な作業ではあった。
汗がしたたり落ちてくる。


けれどこれで膨大な利子が減らせると思えば、頑張れた。


「頑張っているねえ、フレデリカちゃん」


しばらく磨いていると男の声が聞こえてきた。
振り向くとポルコがいた。


ニヤニヤと顔をにやつかせながら私を見つめている。


私はぺこりと頭だけ下げて、作業を続けた。


「あ、あの、ポルコ様」


「うん?どうした?」


「な、何かご用がおありでしょうか?」


思わず私はポルコに訊ねた。
彼はずっと私を見ていたからだ。


床掃除を初めてかれこれ数時間がたっている。
その間ずっとポルコは私の事をみつめていた。


「いいや。気にせずに続けなさい」


「わ、わかりました」


ポルコにそう言われ、作業に戻る。


彼の視線が、私の体に向いているのがわかった。
しゃがんで床を磨いているときに、チラリと見える下着などに。


(・・・いやらしい)


母の言っていた悪い噂。
どうやらあれは本当であったようだ。


スカートが短いのも。
床掃除をさせるのも。


わざと下着が見えるように仕向けて、それを楽しんでいる。


借金の金額が金額だ。
楽な仕事場ではない、とは予想していた。


だが、こういう方面の大変さであったとは。


(お父様、早く、早く迎えに来てください)


私は不満を飲み干しつつ、床を磨き続けるのであった。


掃除が終わるともう夕方になっていた。
仕事が終わり夕食の時間だ。


夕食はとても豪勢なものであった。
とてもメイドが食べられるようなものではないほどのもの。
お肉に、野菜、果物など盛りだくさんだ。


夕食が終わると、お風呂の時間だ。
ここはメイド専用の大浴場があるらしく、そこを皆で使用する。


「フレデリカ。あなたは服をこちらに脱いでください」


「え?」


浴場に入るために服を脱いでいると、メイド長にそう言われた。
メイド長は老婆だ。


私達と同じようにメイド服を着ながらも熟練者というオーラを放っている。


「なんでですか?」


「ポルコ様のご指示です」


「わかりました」


脱いだ服をメイド長に渡す。
皆は専用の所に入れているのに、私だけ別のようだ。
疑問に思うが、命令なので素直に従う。


「おつかれさん。大変だったろ!」


「はい。でもアリスさんのおかげで無事に終われました」


「はは、お前いい奴だな!」


アリスさんとともに湯船に浸かる。
体がじんわりと暖まっていった。


疲れが湯船に溶けていくようだ。


この場所は福利厚生はとても良いようだ。
家にいたときよりもいい生活を送らせてもらえている。


ポルコの行動にさえ目をつむれば、だが。


「あ、そうだ、フレデリカ」


「なんですか?」


「お前、夜は何があっても寝たふりをしていろよ?」


「はい?どういう意味ですか?」


「なればわかるよ。とりあえず、起きるなよ」


アリスさんはそう私に忠告する。
それ以上は聞いても詳しく教えてくれなかった。


夜になれば分かるの一点張りだ。


(夜に何かあるってことだよね)


私はお風呂からあがり、用意された寝間着に着替えながら考える。
寝室につくと、六人部屋であった。


私とアリスさんの他に四人女の子がいた。
これから寝食をともにするメンバーのようだ。


軽く自己紹介をして、今日の交流は終わった。


ベッドに入り就寝する。
ベッドはとてもふかふかで寝心地がよかった。


でも私は寝付けないでいた。
お風呂の時のアリスさんの言葉を思い出していたからだ。


(何が、あるんだろう)


皆の寝息が聞こえてくる中。
私は起き続ける。


そして、それはやってくるのであった。
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