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こんなキラキラした瞳しちゃって、可哀想に・・・
しおりを挟む「「は?」」
ぽかんとした間抜け顔がわたくしへ向けられる。
「ですから、わたくしとあなたの間にあったのは『婚約の約束』であって、正式に婚約を交わしてはいないので、婚約破棄をする必要は無いのです」
「なっ、だ、だって、あなたの家との政略でっ、結婚の約束だと父がっ!」
「ええ」
わたくしと彼のお父上が友人同士で、そして互いの家に損が無いから、と。お互いの子供が大きくなったときに、もし子供達に好きな人がいなければ結婚させよう、という酒の席での口約束。故に……
「『婚約の約束』なのですよ。仮婚約、と称するのが近いかしらね? まぁ、どちらかが否と言えば簡単に無かったことできるので、仮婚約よりももっと軽くてフランクなものでしたが。ここ最近はあなたに好きな方ができたと思ったので、『婚約の約束』を無かったことにしようと話し合いを求めたのですが、あなたが逃げ回ったせいで、話し合いの場を持つこと無く今日を迎えてしまいましたわ」
「そんな……こんな簡単に、済むことだったのか……」
「ええ、そうですわね。それで、あなた方はこれからどうしますの?」
「え?」
簡単に『婚約の約束』が無くなって呆然とした彼と彼女が、きょとんとした顔をわたくしへ向ける。
「ですから、これからどうするのかと聞いているのです。学園はどうするのか? お互いのご両親へのお話は? そのお腹の子供を産むのか、それとも産まない」
「産みます!」
またもや、わたくしの言葉を遮っての宣言。
「そうですか。これから大変かと思いますが」
「わたし達は愛があればそれでいいんです! そうよね?」
ぎゅっと繋がれた二人の手。けれど、
「あ、ああ。そう、だな……」
わたくしがお互いの両親、という言葉を出した後から彼の顔色が優れない。
「子供が先になって、普通の順番はちょっと違うかもしれませんけど、わたしは彼と結婚して、愛の溢れる幸せな家庭を築いて行こうと思います! 愛情の無い家庭なんて寂し過ぎますからね! 大丈夫ですっ、わたしと彼でこの子を立派な貴族として育てて行きますから安心してくださいね!」
と、そう笑顔で宣言した彼女の顔には、わたくしへの優越感が滲んでいた。『彼が選んだのはわたしよ!』と、夢と希望に満ち溢れた表情をして――――
ふっわふっわした、どこぞのラブロマンスのようなことを宣った。
なんだったかしら? 愛があれば……市井で暮らすことになろうとも、だとか。愛があれば外国で暮らすことになろうとも、だとか。愛があれば貧乏でも、だとか。愛があれば、それだけで……etc.
まぁ、別にわたくしも……一つ年下だったからか、彼のことは手の掛かる弟くらいにしか思っていなかったから、そんな勝ち誇った顔で優越感に浸られてもねぇ? という気分で一杯だ。
なんというか、お花畑なのは十二分に判った……
昔から、この野郎のことは短絡的でノータリンだとは思っていた。彼のご両親には良くしてもらったから、このままわたくしに好きな人ができなければ結婚してもいいかな? と、思っていた。
まぁ、今となってはむしろ縁が切れたという喜びしかない。
こんな、こんなっ……出逢ってたったの数ヶ月で未成年の、それも年下の、脳みそお花畑で、頭の悪い馬鹿女を、孕ませるような無責任且つ短絡的なクソ馬鹿男だとは思っていなかったしっ!?
もう、本当にコイツと結婚しなくて本当によかったっ!!!!
それに・・・ぶっちゃけ、この脳みそお花畑な女には憐れみしか湧かない。
こんなキラキラした瞳しちゃって、可哀想に・・・
我が国の貴族としては、もう色々と致命的。それに、そういう風に『愛さえあれば!』と言って無謀な道を突き進んで幸せになれるのは、フィクションの中か、余程幸運な一握りの極一部の人だけだというのに。
お節介だとは思うけど・・・少し、『現実』というものを見せてあげようじゃないの。
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次回から吹雪いて来ます。|・`ω・)
応援ありがとうございます!
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