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お節介だとは思うけど・・・少し、『現実』というものを見せてあげようじゃないの。
しおりを挟むお節介だとは思うけど・・・少し、『現実』というものを見せてあげようじゃないの。
「質問なのですが、お二人の言う『それ』って愛なのかしら?」
「な、なにを……そ、そんなことあなたに言われる筋合いは無い!」
「きっと彼女は、あなたに愛されなかった理由を聞きたいんですよ。最後ですから、答えてあげましょうよ」
「そ、そうなのか?」
「もちろんです! わたし達は愛し合っているから、こうなったんです!」
「そうですか。お二人は、愛があればそれでいい、と。他にはなにも要らないと仰るんですね?」
「え?」
パチパチと大きな瞳を瞬かせる彼女。
「あなた方、歴史や保健の授業は真面目に受けていて?」
「? いきなりなんの話ですか?」
「あなた方はまだ学生です。一応、高等部生だと思うのですが、我が国の常識は知っていて? 学園を退学になるにしろ、一般常識も知らなくては苦労致しますわよ?」
小柄で、中等部生徒でも通じそうな体躯。
本当にこれからのことを判っているのなら、こんなに楽観的にはなれないと、わたくしは思う。
「なんですかっ? わたしが馬鹿だって言いたいんですかっ? 授業もちゃんと受けてます!」
え? どう見ても馬鹿以外には見えませんが? と、出そうになった言葉を危うく飲み込む。
「この国の、十代に差し掛かった子供なら誰でも知っていると思うのですが。若年齢での女性の妊娠と出産は、我が国では推奨されておりません」
「? なにを……?」
「そ、それはっ、確かに教科書に書かれていましたけどっ……推奨されていないだけで、わたし達は実際に愛し合っているんです!」
愛、愛している、愛し合っている、と馬鹿のように繰り返される言葉。
本当に、ちゃんと授業は受けていたのかしら?
「つまり、平たく言うと、我が国では十六歳以下の女子の妊娠出産は、国に難色を示される事態だということです。知っていて当然のことなのですがね? まず、女性にとって妊娠と出産は命懸けのことです。成熟した女性の、それも二名以上の子供を産んでいる経産婦ですら、出産は命懸けなのです。それを未成年の、身体が成熟しているとは言い難い年齢での妊娠出産など、母体には著しい負担となるのです」
彼女は小柄だ。同学年の女子生徒より、一回りは小さい。胸はそれなりにあるようだが。わたくしよりも……いや、そんなことより、今は彼らへ『現実』を教えてやるのが先決だ。
「基本的には、流産、難産、死産のリスクは当たり前。もし、無事に出産まで漕ぎ着けることができたとしても、その後の母体へのダメージから長いこと産褥に苦しむ可能性もあるそうです。はたまた、産褥から回復せず、起き上がることもできないないまま……というケースすら珍しくありませんわ」
さっと顔を青褪めさせる二人。
「一時期、女性は若ければ若い程いいという風潮が流行った折り、年若い十代前半の女性が妊娠出産の際に儚くなってしまうという悲劇的な事例が多発した為、『若年齢での女性の妊娠出産を推奨しない』と、王家が大々的に下知させております」
まぁ、つまりは、貴族子女が十代半ば以下の年齢で妊娠出産という事態になってしまうと、王家の意向に逆らったという印象を持たれてしまうワケだ。
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