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25 利息の足しにしかならない

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「だから、借りた金は返せって」

「そ、それはアンゼリカが……」

「これはあんたら母娘がザザーラン家に入る前に市井でこさえたもんだろ?なんでザザーランの……いや、今はラグージか。そこのお嬢様が払うんだ?意味が分からんだろう」

「……この男のいう事も最もだ……。少し証文を見せてもらおうか」

「どうぞ?」

 男はトレントに書類を渡す。

「……な、なんだ?この金額は……!?王家の年間予算の3年分……いや5年分はある?意味が分からん!なんなんだ!暴利にもほどがある!!」

「いーや、正当な計算の元だよ。利息と、貸付年数見てくれ。10年近くも支払いを拒んでたんだ。利息が利息を呼んで大変な事になってるんだよ。今この瞬間にも借金は増えてる。わかるだろ?きちんとその女の血判も入ってる。間違いじゃねーよ」

 契約書類に間違いはない。トレントはロザリーをきつく睨み、そして

「これだから愚かな平民を家に入れるなど……タティオ!お前の責任は大きいぞ!この女をさっさと売ってしまえ!」

「う、売るですって!?この私を!?どういう事ですかっ助けてください旦那様!!!」

 青い顔を更に真っ青にしてドロシーはタティオに縋り付く。

「ち、父上!ドロシーは私の妻です!妻を売るなど……」

「ではこの借金はどうするつもりだ!」

 ダン!と激昂し、テーブルを叩きつける音にタティオとドロシー、リルファは縮みあがった。

「いくら平民から借りた金とはいえ、これは正式な契約書類だ!放っておけばどんどん借金は膨らみ続ける!何故、もっと早く手を打たなかった!」

「借金を返せなど、言われたことはありませんでした!」

 必死でドロシーは反論するが、男はつまらなさそうに口を出した。

「ハァ?毎月毎月取りに行ったよ。ただ、使用人達が「奥様に追い返せと指示されておりまして……」と謝るもんでね。仕方がないだろ?貴族の衛兵は怖いし」

「そ、そんなこと……」

 ドロシーの記憶は曖昧だが、ザザーラン家に上がってすぐにそういう話はあったのだ。

「なんて厚かましいのかしらっ!追い返して頂戴!もう二度と私に報告しないでっ!!」

 そう、花瓶と共にメイドに投げつけた。だからメイドはそれをアンゼリカに報告したし、借金取りの話は二度とドロシーにしなかったのであった。そしてアンゼリカは借金を払い、借用書も貰い受け……今、その膨らんだ金を回収しに来たのだった。
 男の台詞に少しの嘘はある。毎月取りには行っていない。だが、「奥様が追い返すことを命じて二度と報告しない」事実と「借金がある」ことに変わりはないし「借金には利息がついている」ことに間違いもなかったのである。

「さ、どうする?このご婦人買い取ってもいいが、利息の足しにしかならんけど?」

「ひっ」

「そっちの娘も連れていけ!」

「父上!リルファは私の娘です!!」

 トレントの言葉にさしものタティオは慌てて立ち上がるが

「所詮平民の血!そのような物をザザーラン家に入れるからこんな憂き目にあうんだ!そやつらを処分してアンゼリカを戻せ。そうすればあの娘ならば全て解決できよう!」

「嫌です!父上!」

「わ、私、売られたくなんかないわ……たすけてお父様!!」

「大丈夫だ!リルファ!お前は私が守る!!」

「あ、あなた……助けて」

「ドロシー大丈夫だ!」

 震える妻子を優しくタティオは抱きしめるが

「あんたら全員奴隷に売っても足りねえんだけど?」

 男の声は非情だった。

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