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Ⅲ 帝魔戦争
1節 作戦会議 ②
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「さて。では再開しましょう」
エイジが号令をかけると幹部達は席に戻り、真剣な顔つきになった。
「戦略の概要については、理解していただけたかと思います。ですので、次は作戦を実現させるために必要となる準備の話をしましょう。……ですが、その前に確認したいことがある」
彼は視線を動かして、ある者を見遣る。
「では、まず……モルガン、レイヴン将軍。先程言ったように中、上級魔族が要となるのだけれど、彼らの戦力はどれ程かな?」
「軍属の上級魔族はァ、たしかァ……多くても、確実に4万は切るわねェ」
「しかし、そんなに必要か?」
「敵を侮ることなかれ。そして短期間でかつ消耗を抑えるためには、少しでも戦力は多い方がいい」
「……そうだな。よく考えれば当然のことだ。今日の俺は一体どうしたんだろうな、指揮官失格発言が多すぎる」
本気で落ち込んでしまったレイヴン。どう慰めようか、と考えたがそれより気にするべきことがあるので思考を強引に切り替える。フォローは後でするか、もしくは誰かがしてくれるだろうと。
「いやしかし……うーん、予想よりだいぶ少ないな。よし、少し計画を変えて、一部には下級の魔族も採用しよう。頭数を確保しないとな。それで、次はエリゴスさん。出撃する部隊分の兵装は、あなたの予想でいいですが、足りますか?」
「なるほどなぁ。この時の為に兵装の統計を取っていたわけか。称賛しよう。だが残念かな、かなり足りぬ。これほどの大軍を動かす事態など初めてだからな、倉庫を空にしても六割に届くかどうかだ」
「……んー、困ったな。これは攻められるのはしばらく後になるかも。それも踏まえて作戦を立て直すか……………よし、詳しい事は後で決めるとして、今決めていることだけでも伝えておこう。この戦いではフォラスとメディア、モルガンには城の留守を頼みたい。万が一に備えての城の防衛、そして首脳陣の居ない状態での国の管理をする者が必要だからだ。それに三人とも正面戦闘向きではないからな。そして兵力だが、働きに来てもらっている獣人やエルフたちも、まだ出撃させるわけにはいかない。同盟を結んで間もないからな、すぐに危険な戦線に出せば不信感を抱かれてしまう」
「うんうん、賢明な判断だ。では、城の留守は我々に任せたまえ」
「しょうがないわねェ、アナタと一緒に戦いたかったけど、任されたならやるわァ」
人選に不満は出ず、そこはつつがなく決まった。
「ありがとう、頼むよ。これで、確認は終わりだ。それでは、これから各部署にどう動いてもらうか伝達する」
エイジが横に手を出すと、すかさずダッキが書類を渡す。それと同時に、シルヴァが幹部たちに資料を配っていく。
「まず、フォラスら魔導院は、戦略兵器の開発をしていただく。先程説明したように、高度な作戦であるため、その実行を補助する魔道具が必要だ。また、戦略の詳細が確定次第、必要となった兵器の開発、量産が仕事だ」
「ふむ、これで腑に落ちましたよ。なぜ、あのような魔導具を私に発注したのか」
彼が漏らした言葉に注意が集まる。果たしてそれがどのような物なのか、興味津々な様子。
「エリゴスら兵站は、兵装を整理する、ないし生産して用意すること。そして、物資を輸送し、作戦輸送地にて配布してもらう」
「了解した。……む、このコンテナというのは?」
「元物流専攻としては、外すことのできない要素だな。コンテナというのは、要はデカくて硬い箱であり、極めて効率的な輸送用容器である。本当は鋼鉄製がいいんだが……欅や樫、カラマツなどで代用だ。設計図はそこに描いてある通りで、馬車もそのように製造を。んで、そのコンテナに武器なり貨物を大量に詰め込んで輸送すること。メリットとしては、貨物を保護できること。一応このノウハウは今後に活かせるものなので、めんどくさがらず作っていただけると助かります」
「承ったぞ。しかし……ふむ、効率的か。はて、何故だろうな」
「ヒント。モーダルシフト、複合一貫輸送」
それでもまだ訳が分からず、頭を捻る兵站担当。しかし、そうなるのも無理はない、答えを導くためには、今の魔王国ではピースが足りなさすぎる。
「レイヴンら司令部は戦術を練り、部隊の編成、戦闘の訓練を指揮すること。情報漏洩の観点から、詳細は機密とし、緘口令を出させてもらう。が、奇襲などの模擬訓練は積極的に行ってほしい」
「了解した」
「モルガンら人事部は、選定された人員の把握と情報伝達を。これがないと、何をするにも大混乱だ」
「ワタシの仕事もダイジなのね、わかったわ」
「ノクトら医療は、多くの怪我人が出ることが予想されるため、医薬品の仕込みと病床の確保を」
「はーい、やっとくよ」
「エレンら観測は、帝国へ斥候を派遣し、敵情勢の把握を一任する。それから、進行ルートを決めるため、地図を作成。また道路の簡易的な舗装、整備も行うこと」
「舗装カ……フム、コノ資料ノ通リニスレバヨイノダナ」
「ええ。道を均し、石などを取り除き、穴を埋め、目印となるものを設置すること。道が綺麗であればあるほど、行軍速度はうんと速くなる」
エイジは資料を見ながら、矢継ぎ早に指示を出していく。幹部達も即座に理解、自らの立場を把握すると応答を返す。
「これで伝え終わったかな。準備状況に合わせて適宜調整はするけど、一応の作戦実行時間は二週間後を予定している。本日より各自準備を開始してください。それでは、解散!」
エイジが号令をかけると幹部達は席に戻り、真剣な顔つきになった。
「戦略の概要については、理解していただけたかと思います。ですので、次は作戦を実現させるために必要となる準備の話をしましょう。……ですが、その前に確認したいことがある」
彼は視線を動かして、ある者を見遣る。
「では、まず……モルガン、レイヴン将軍。先程言ったように中、上級魔族が要となるのだけれど、彼らの戦力はどれ程かな?」
「軍属の上級魔族はァ、たしかァ……多くても、確実に4万は切るわねェ」
「しかし、そんなに必要か?」
「敵を侮ることなかれ。そして短期間でかつ消耗を抑えるためには、少しでも戦力は多い方がいい」
「……そうだな。よく考えれば当然のことだ。今日の俺は一体どうしたんだろうな、指揮官失格発言が多すぎる」
本気で落ち込んでしまったレイヴン。どう慰めようか、と考えたがそれより気にするべきことがあるので思考を強引に切り替える。フォローは後でするか、もしくは誰かがしてくれるだろうと。
「いやしかし……うーん、予想よりだいぶ少ないな。よし、少し計画を変えて、一部には下級の魔族も採用しよう。頭数を確保しないとな。それで、次はエリゴスさん。出撃する部隊分の兵装は、あなたの予想でいいですが、足りますか?」
「なるほどなぁ。この時の為に兵装の統計を取っていたわけか。称賛しよう。だが残念かな、かなり足りぬ。これほどの大軍を動かす事態など初めてだからな、倉庫を空にしても六割に届くかどうかだ」
「……んー、困ったな。これは攻められるのはしばらく後になるかも。それも踏まえて作戦を立て直すか……………よし、詳しい事は後で決めるとして、今決めていることだけでも伝えておこう。この戦いではフォラスとメディア、モルガンには城の留守を頼みたい。万が一に備えての城の防衛、そして首脳陣の居ない状態での国の管理をする者が必要だからだ。それに三人とも正面戦闘向きではないからな。そして兵力だが、働きに来てもらっている獣人やエルフたちも、まだ出撃させるわけにはいかない。同盟を結んで間もないからな、すぐに危険な戦線に出せば不信感を抱かれてしまう」
「うんうん、賢明な判断だ。では、城の留守は我々に任せたまえ」
「しょうがないわねェ、アナタと一緒に戦いたかったけど、任されたならやるわァ」
人選に不満は出ず、そこはつつがなく決まった。
「ありがとう、頼むよ。これで、確認は終わりだ。それでは、これから各部署にどう動いてもらうか伝達する」
エイジが横に手を出すと、すかさずダッキが書類を渡す。それと同時に、シルヴァが幹部たちに資料を配っていく。
「まず、フォラスら魔導院は、戦略兵器の開発をしていただく。先程説明したように、高度な作戦であるため、その実行を補助する魔道具が必要だ。また、戦略の詳細が確定次第、必要となった兵器の開発、量産が仕事だ」
「ふむ、これで腑に落ちましたよ。なぜ、あのような魔導具を私に発注したのか」
彼が漏らした言葉に注意が集まる。果たしてそれがどのような物なのか、興味津々な様子。
「エリゴスら兵站は、兵装を整理する、ないし生産して用意すること。そして、物資を輸送し、作戦輸送地にて配布してもらう」
「了解した。……む、このコンテナというのは?」
「元物流専攻としては、外すことのできない要素だな。コンテナというのは、要はデカくて硬い箱であり、極めて効率的な輸送用容器である。本当は鋼鉄製がいいんだが……欅や樫、カラマツなどで代用だ。設計図はそこに描いてある通りで、馬車もそのように製造を。んで、そのコンテナに武器なり貨物を大量に詰め込んで輸送すること。メリットとしては、貨物を保護できること。一応このノウハウは今後に活かせるものなので、めんどくさがらず作っていただけると助かります」
「承ったぞ。しかし……ふむ、効率的か。はて、何故だろうな」
「ヒント。モーダルシフト、複合一貫輸送」
それでもまだ訳が分からず、頭を捻る兵站担当。しかし、そうなるのも無理はない、答えを導くためには、今の魔王国ではピースが足りなさすぎる。
「レイヴンら司令部は戦術を練り、部隊の編成、戦闘の訓練を指揮すること。情報漏洩の観点から、詳細は機密とし、緘口令を出させてもらう。が、奇襲などの模擬訓練は積極的に行ってほしい」
「了解した」
「モルガンら人事部は、選定された人員の把握と情報伝達を。これがないと、何をするにも大混乱だ」
「ワタシの仕事もダイジなのね、わかったわ」
「ノクトら医療は、多くの怪我人が出ることが予想されるため、医薬品の仕込みと病床の確保を」
「はーい、やっとくよ」
「エレンら観測は、帝国へ斥候を派遣し、敵情勢の把握を一任する。それから、進行ルートを決めるため、地図を作成。また道路の簡易的な舗装、整備も行うこと」
「舗装カ……フム、コノ資料ノ通リニスレバヨイノダナ」
「ええ。道を均し、石などを取り除き、穴を埋め、目印となるものを設置すること。道が綺麗であればあるほど、行軍速度はうんと速くなる」
エイジは資料を見ながら、矢継ぎ早に指示を出していく。幹部達も即座に理解、自らの立場を把握すると応答を返す。
「これで伝え終わったかな。準備状況に合わせて適宜調整はするけど、一応の作戦実行時間は二週間後を予定している。本日より各自準備を開始してください。それでは、解散!」
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