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生還①

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ノアは薄暗い場所に横たわっていた。
ぼんやりと目に入ってきた壁を見つめる。
しばらくして自分が今いるのは洞窟の中だということに気づいた。

「目が覚めましたか」 

背後でリアムの声がした。

身を起こして声の方を向くと茶トラの子猫が座っていた。
その奥でシルヴェスターが丸くなっている。
よく見てみるとこの洞窟には見覚えがあった。
シルヴェスターの住処だ。

 「どうしてここに?」

ノアは呟いた。

「雷が僕達を直激すると同時に、移動魔法を使いました」

 ノアはリアムの機転に感謝した。
そして、シルヴェスターがバリアの魔法を張ったはずなのに、 雷が直激したことに疑問をおぼえた。
ノアは立ち上がって横になっているシルヴェスターのそばに移動した。
雷に貫ぬかれたときの痛みは覚えているが、動いても何も問題なかった。

「雷があたって僕もあなたも死にかけていました。シルヴェ スターがここに移動してすぐ治癒治魔法をほどこしてくれたんんですが、自分の傷は治しもせず、そのまま眠むってしまいました」
 
リアムがシルヴェスターの顔をのぞきこんだ。呼吸は安定しているが、傷の出血はまだ止まっていない。 
ノアは急に疲労を覚えた。

「まだ体が雷に打たれた衝撃から立ち直っていないんだと思います。寝ていた方がいいですよ」

ノアの様子に気づいてリアムが言った。

「うん。そうするよ」

ノアはシルウェスターと背中あわせになって横になった。

「リアムは大丈夫なの?」

 茶トラの子猫は小さくうなずいた。
ノアは再びね眠りの沼に引きずりこまれた。

「重い。どけ」

つっけんどんな声でノアは目を覚ました。
いつの間にかシルヴェスターの上にのしかかるように寝てしまっていたらしい。

「もう大丈夫なんですね、良かった!」

ノアは嬉しそうに言って立ち上がったが、ふらついて前のめりに転んで再びシルヴェスターを押し倒すはめになった。

「何をやっているんだ、お前こそまだ大丈夫じゃないようだな」

シルヴェスターがあきれたように言った。 

「うさぎを捕えておきました」

リアムが言った。
見ると、リアムの足もとにリアムよりも大きなうさぎが置いてあった。

「どうやって捕えたの?」 

ノアは驚いて聞いた。

「シルヴェスターに変げして捕えました」

そうだった。リアムは姿を変えることもできるのだ。 
ノアはリアムが魔獣に姿を変えていたときのことを思い出した。

「ノアに変げしても良かったんですけど、どんくさそうなのでやめておきました」

 リアムがよけいな一言をつけ加えたが、ノアの関心別の方向に向いていた。 

「私にもなれるの?」

 リアムはこたえる代わりにノアに姿を変えた。
目の前に灰色で薄い縞模様のある猫が現れる。
水に映った自分を見たこと がないわけではないが、これほどはっきり見たことはなかった。

「これが私なんだ」

 ノアはもう一匹に増えた自分を眺め回した。

「......どういう自分を想像していたんですか」 

ノアが何も言わないでいると、彼女の姿をしたリアムが口を開いた

「特にこれと言って想像してた自分がいるわけではないんだけれど、何というか、美猫じゃないって言われた理由が分かる気がする」

ノアは自分で自分を納得させるようにうなずいた。

「お前を助けに行く途中ででちょっとな」

意味が分からないという顔をしているリアムにシルヴェスターが言った。

「そういえばネオはどうしたんだろう」

ノアが旅の途中であった子猫のことを思い出した。 

「まあ、あいつはレイラに任せておけばいいだろう」

「でも、あの子を見つけたのは私だし、やむを得ずレイラに任せることになっただけで、ずっと預けておくのは悪いし」 

「確かあいつは子猫が好きだったと思うが」

「そういう問題じゃないです」

「あの、言わなければならないことがあったんでした」 

ノアとシルヴェスターの会話を黙って聞いていたリアムが思むろに口を開いた。
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