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異世界③
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ノアは狼唱のあまり声をあげ、後ずさったときに足を岩壁にぶつけて小さな悲鳴をあげた。
「もう少しましな現れ方はなかったんですか?」
そう言ったノアの声は裏返っていた。
「ましな現れ方?」
シルヴェスターが鼻を鳴らし、ノアを見つめてから穴
の入り口をちらりと見やった。
「閉め出しをくらったか」
声にかすかに笑みらしきものが混じる。
「あなたがいなかったから焦って出てみたんですよ。そうしたら......」
ノアは言葉をにごし、シルヴェスターを見つめた。
「どこに行っていたんですか」
「どこでも良いだろう」
黒い魔法猫はノアを見下ろして横柄に答えた。
シルヴェスターはノアよりも少し背が高かった。
「リアムはどこですか」
「下界だが」
「どうやったら下界に下りられるんですか。高いところ、 嫌いなんです。なんとかしてくださいよ。リアムの無事も確かめたいし」
「だったら、戻れ」
シルヴェスターが穴の入り口を顎で指し、無造作に命じた。初対面で命令口調なのはどうかと思ったが抗う理由もなかったのでノアは素直に従った。今回、入り口を通り抜けても抵抗は感じなかった。シルヴェスターも後から入ってきて部屋の中央まで歩いていった。
黒い魔法猫は何かが唱えることも道具を使うこともなかった、ただ一瞬下を向いてそれからノアの方を向いた。
「外に出てみろ」
「え?」
部屋の中は何も変わっていなかった。半信半疑のまま、ノアは穴の外に出た。
目に入ってきたのは、岩棚ではなく森だった。
「どうやって......」
ノアは呟いた。
後ろからシルヴェスターが出てきて私の横に立った。
「部屋は何も変わっていなかったのに」
「同じ内装にしているからだ」
シルヴェスターがこたえた。
「何のためにですか?」
「何のためでも良いだろう」
またその答えだ。とノアは思ったが何も言わなかった。 秘密の多い魔法猫だ。
「リアムはこのあたりにいるだろう。それから、森からは出るな」
シルヴェスターが言った。
ノアは見知らぬ森に一歩足を指み出した。振り返るとシルヴェスターは住処に戻っていくところだった。
「一緒に探してくれないんですか?」
「私は忙しい」
ノアは仕方なく肩をすくめた。見知らぬ森で迷子に なりそうだが、これ以上黒い魔法猫の親切心を期得できそうもない。
ノアは今まで森に入ったことがなかった。そのため、全てが真新しかった。
ふかふかの下草えが足を包みこみ、木々の間から漏れた日の光が森の中の草木に反射してきらめく。
ノアはずっと上を向いて歩いていたので後ろからつけてくる者に気がつかなかった。ついに異変を感じて振り向くとシルヴェスターにそっくりな猫がノアの背後に立っていた。だが、シルヴェスターには顔に白い模様があり、片耳も白いのに対し、その猫は漆黒の毛なみだった。
「もう少しましな現れ方はなかったんですか?」
そう言ったノアの声は裏返っていた。
「ましな現れ方?」
シルヴェスターが鼻を鳴らし、ノアを見つめてから穴
の入り口をちらりと見やった。
「閉め出しをくらったか」
声にかすかに笑みらしきものが混じる。
「あなたがいなかったから焦って出てみたんですよ。そうしたら......」
ノアは言葉をにごし、シルヴェスターを見つめた。
「どこに行っていたんですか」
「どこでも良いだろう」
黒い魔法猫はノアを見下ろして横柄に答えた。
シルヴェスターはノアよりも少し背が高かった。
「リアムはどこですか」
「下界だが」
「どうやったら下界に下りられるんですか。高いところ、 嫌いなんです。なんとかしてくださいよ。リアムの無事も確かめたいし」
「だったら、戻れ」
シルヴェスターが穴の入り口を顎で指し、無造作に命じた。初対面で命令口調なのはどうかと思ったが抗う理由もなかったのでノアは素直に従った。今回、入り口を通り抜けても抵抗は感じなかった。シルヴェスターも後から入ってきて部屋の中央まで歩いていった。
黒い魔法猫は何かが唱えることも道具を使うこともなかった、ただ一瞬下を向いてそれからノアの方を向いた。
「外に出てみろ」
「え?」
部屋の中は何も変わっていなかった。半信半疑のまま、ノアは穴の外に出た。
目に入ってきたのは、岩棚ではなく森だった。
「どうやって......」
ノアは呟いた。
後ろからシルヴェスターが出てきて私の横に立った。
「部屋は何も変わっていなかったのに」
「同じ内装にしているからだ」
シルヴェスターがこたえた。
「何のためにですか?」
「何のためでも良いだろう」
またその答えだ。とノアは思ったが何も言わなかった。 秘密の多い魔法猫だ。
「リアムはこのあたりにいるだろう。それから、森からは出るな」
シルヴェスターが言った。
ノアは見知らぬ森に一歩足を指み出した。振り返るとシルヴェスターは住処に戻っていくところだった。
「一緒に探してくれないんですか?」
「私は忙しい」
ノアは仕方なく肩をすくめた。見知らぬ森で迷子に なりそうだが、これ以上黒い魔法猫の親切心を期得できそうもない。
ノアは今まで森に入ったことがなかった。そのため、全てが真新しかった。
ふかふかの下草えが足を包みこみ、木々の間から漏れた日の光が森の中の草木に反射してきらめく。
ノアはずっと上を向いて歩いていたので後ろからつけてくる者に気がつかなかった。ついに異変を感じて振り向くとシルヴェスターにそっくりな猫がノアの背後に立っていた。だが、シルヴェスターには顔に白い模様があり、片耳も白いのに対し、その猫は漆黒の毛なみだった。
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