奴隷スタートの異世界ライフ ~異世界転生したら速攻で奴隷として売られてしまったんだが~

タジリユウ

文字の大きさ
上 下
27 / 95

第27話 工場の始動

しおりを挟む

「これが工場だべか~物凄くおっきいんだべな」

 奴隷商を出て馬車で工場まで送ってもらった。リールさんとアルゼさんは先に屋敷に帰っている。この工場は街の外れにあるので屋敷から馬車で30分近くはかかる。まあ俺だけなら身体能力強化魔法を使って走ればもっと早く帰れるんだけどな。

「ええっ、もともとはこの街の領主様が使っていた工場ですけどしばらく稼動していなかったらしいです。このたび稼動が再開されることになって中も綺麗にされてますよ。従業員用の部屋もありますのでここが工場であると共に家でもありますね、ローニさん」

「敬語はやめてくんろ、名前も呼び捨てにして欲しいべ。ユウキ様はオラ達の雇い主だ、歳は上でもそこらへんはきちんとして欲しいだ」

 おっと可愛らしい少女のような外見をしていてもそこはやはり25歳の女性だけある。一応年上ということで気を使ったのだが逆に気を使われてしまった。それにしてもこの人は他のみんなと比べて元気だな。もしかしたら奴隷として売られてまだ日が浅かったのかもしれない。

「う~ん、俺の周りは年上で先輩ばかりだからたまに敬語が出ちゃうかもしれないけれど努力するよ、改めてよろしくねローニ!」

「こちらこそよろしくお願いしますだ!」

「それではみなさん、まずは女性と男性に分かれて順番に水を浴びてください。服は用意してありますからそれに着替えてご飯にしましょう。仕事は明日からなのでご飯を食べたら今日はゆっくりと休んでください」

 俺やマイルやサリア達が迎えられたときと同じように身体を洗ってもらう。長い間奴隷商にいたこともあるせいかかなり時間がかかったが、その間に温かい食事の準備もオッケーである。そしてみんなが揃ったところで乾杯となる。



「俺はユウキといいます。この街の領主であるアルガン家の奴隷として仕えています。ですが主であるエレナお嬢様はとても優しい方なので皆さんも安心してください。今日はしっかりと食べてしっかりと休んでくださいね。それじゃあこれからよろしくお願いしますね、乾杯!」

「乾杯!」

 乾杯と言ってくれたのはローニだけだったが、それでもみんな少しずつだがご飯を食べはじめてくれた。やはり俺も同じ奴隷という立場だからそれほど警戒されていないのかもしれない。

「おいしいねえ~」

「うわっ、すっごく美味しい!」

「こんなに美味しいご飯久しぶり!」

 みんな俺達と同じような反応をするな。気持ちは痛いほどわかる。いや、奴隷商に長期間ろくな食事を与えられていないか、ら俺達以上に美味しく感じてるんだろうな。当然食事は前以上に身体に優しくて栄養があるものにしてある。

「今日の料理は俺が作ったけど、明日からはみんなで当番を決めて作ってもらうことになるからよろしくね」

 さすがに屋敷と工場の食事を全部作るのは無理なので工場の食事はみんなに任せたい。一応奴隷商で話を聞いたところ3人ほど料理ができるものがいたので交代で任せて大丈夫だろう。

「ユウキ様が作ってくれたのですね、とても美味しいです」

「ユウキ様、とってもうめえべ!」

「それはよかった。身体が弱っているところで食べ過ぎると逆に身体に悪いから今日のごはんは量が少ないけれど明日からは少しずつ量も増やしていくから我慢してね。

 それとできればユウキ様はやめて欲しいかな。俺もみんなと同じ奴隷だし、実際のみんなの雇い主は俺の主のエレナお嬢様だから俺にまで様付けする必要はないし、敬語もいらないよ」

 元の世界では高校生だった俺に様付けはちょっと微妙なんだよな。ただでさえ誰かの上に立つ立場になるのは初めてなのに。

「明日からもこんなに食べさせてもらえるのですね!それではなんとお呼びすれば?」

「そのままユウキでいいし、呼びづらければさん付けで大丈夫だよ。まあそこらへんはなんでもいいよ」

「わかりました、それではユウキさんと呼ばせていただきますね、これからよろしくお願いしますね」

「オラもユウキさんだべかな」

「ユウキ兄ちゃんでもいい?」

「もちろん自由に呼んでくれ、みんなよろしくね!」

「「「はい!」」」

「それじゃあ食べ終わったら部屋に案内するから今日はゆっくり休むように。明日はお昼くらいから仕事の説明をするからそれくらいの時間に食堂に集合でよろしくね」

 食事のあとは8人を部屋に案内した。この工場には従業員用の5人部屋がいくつかあるのでそこに女性3人と男性5人に別れて暮らしてもらうことになる。女性部屋のほうはローニと女の子が1人とおばあちゃんが1人、男性部屋のほうは犯罪奴隷であった2人の男と男の子が1人とおじいちゃんが2人となる。



「おい、一体どういうつもりだ?」

 みんなを部屋に案内し、食事の後片付けをしようと食堂に向かうところで髭面の男から呼び止められた。

「どういうつもりというと?」

「なんでてめえの主人を殺そうとした俺らをわざわざ買ったんだ?金もあるみてえだしわざわざ俺らなんかを買う必要なんてねえだろうが!」

 ああそういうことか。まあ普通はあえて犯罪奴隷は買わないだろうな。正直に言って、俺もこの人がいなければあえて買おうとはしなかったと思う。

「なんでかといわれたら……なんででしょうね?あなたの境遇に対しての同情というべきか、あの時俺を本気で助けようとしてくれたお礼というべきか、いやたぶんその両方ですね」

「……ふざけやがって。てめえなんざ助けようとしなけりゃよかったぜ」

「うっ、そういえばあの時はすみませんでした。必死だったとはいえ卑怯なことをしてしまって」

「……ちっ、知るか!てめえと話してると調子が狂う。いつかぜってえにここから逃げ出して見せるからな」

 主人である俺の目の前なのに逃げ出す宣言をするとは。まあ舐められているんだろうな。そういうと髭面の男は踵を返し寝室へ戻ろうとする。

「ああ、ちょっと待ってください!」

 髭面の男はビクッとして立ち止まる。もしかして俺から奴隷紋による罰を与えられるのかと思っているのかもしれない。流石にまだ信用なんてないに決まっているよな。

「そういえばまだ名前を聞いてませんでしたね。あなたのお名前教えてください」

 食事の際に全員の自己紹介をする予定だったがみんながあまりも幸せそうに食べていたで明日の仕事を始める時に後回しにしようと思っていたのだが、せっかくの機会だし今聞いておこう。

「……モラムだ」

「モラムさんですね、改めまして明日からよろしくお願いします。安心してください。俺の主人であるエレナお嬢様は間違いなくモラムさんの前の主人より優しくて思いやりのある人ですから」

「……けっ、知ったことかよ!」

 そう言うとモラムさんは寝室へと戻っていった。あの人はエレナお嬢様を殺そうとしていたが、性根はそれほど腐ってないと思うんだよなあ。さあ有言実行、工場のみんなにあまり不自由をかけさせないように頑張っていこう!
しおりを挟む
下記作品は現在書籍化進行中です!(o^^o)
◆  ◇    ◆    ◇    ◆   ◇    ◆
異世界でキャンプ場を作って全力でスローライフを執行する……予定!
◆  ◇    ◆    ◇    ◆   ◇    ◆

感想 6

あなたにおすすめの小説

女神様の使い、5歳からやってます

めのめむし
ファンタジー
小桜美羽は5歳の幼女。辛い境遇の中でも、最愛の母親と妹と共に明るく生きていたが、ある日母を事故で失い、父親に放置されてしまう。絶望の淵で餓死寸前だった美羽は、異世界の女神レスフィーナに救われる。 「あなたには私の世界で生きる力を身につけやすくするから、それを使って楽しく生きなさい。それで……私のお友達になってちょうだい」 女神から神気の力を授かった美羽は、女神と同じ色の桜色の髪と瞳を手に入れ、魔法生物のきんちゃんと共に新たな世界での冒険に旅立つ。しかし、転移先で男性が襲われているのを目の当たりにし、街がゴブリンの集団に襲われていることに気づく。「大人の男……怖い」と呟きながらも、ゴブリンと戦うか、逃げるか——。いきなり厳しい世界に送られた美羽の運命はいかに? 優しさと試練が待ち受ける、幼い少女の異世界ファンタジー、開幕! 基本、ほのぼの系ですので進行は遅いですが、着実に進んでいきます。 戦闘描写ばかり望む方はご注意ください。

修復スキルで無限魔法!?

lion
ファンタジー
死んで転生、よくある話。でももらったスキルがいまいち微妙……。それなら工夫してなんとかするしかないじゃない!

加護とスキルでチートな異世界生活

どど
ファンタジー
高校1年生の新崎 玲緒(にいざき れお)が学校からの帰宅中にトラックに跳ねられる!? 目を覚ますと真っ白い世界にいた! そこにやってきた神様に転生か消滅するかの2択に迫られ転生する! そんな玲緒のチートな異世界生活が始まる 初めての作品なので誤字脱字、ストーリーぐだぐだが多々あると思いますが気に入って頂けると幸いです ノベルバ様にも公開しております。 ※キャラの名前や街の名前は基本的に私が思いついたやつなので特に意味はありません

転生したら第6皇子冷遇されながらも力をつける

そう
ファンタジー
転生したら帝国の第6皇子だったけど周りの人たちに冷遇されながらも生きて行く話です

宇宙戦争時代の科学者、異世界へ転生する【創世の大賢者】

赤い獅子舞のチャァ
ファンタジー
主人公、エリー・ナカムラは、3500年代生まれの元アニオタ。 某アニメの時代になっても全身義体とかが無かった事で、自分で開発する事を決意し、気付くと最恐のマッドになって居た。 全身義体になったお陰で寿命から開放されていた彼女は、ちょっとしたウッカリからその人生を全うしてしまう事と成り、気付くと知らない世界へ転生を果たして居た。 自称神との会話内容憶えてねーけど科学知識とアニメ知識をフルに使って異世界を楽しんじゃえ! 宇宙最恐のマッドが異世界を魔改造! 異世界やり過ぎコメディー!

モブっと異世界転生

月夜の庭
ファンタジー
会社の経理課に所属する地味系OL鳳来寺 桜姫(ほうらいじ さくらこ)は、ゲーム片手に宅飲みしながら、家猫のカメリア(黒猫)と戯れることが生き甲斐だった。 ところが台風の夜に強風に飛ばされたプレハブが窓に直撃してカメリアを庇いながら息を引き取った………筈だった。 目が覚めると小さな籠の中で、おそらく兄弟らしき子猫達と一緒に丸くなって寝ていました。 サクラと名付けられた私は、黒猫の獣人だと知って驚愕する。 死ぬ寸前に遊んでた乙女ゲームじゃね?! しかもヒロイン(茶虎猫)の義理の妹…………ってモブかよ! *誤字脱字は発見次第、修正しますので長い目でお願い致します。

異世界転生漫遊記

しょう
ファンタジー
ブラック企業で働いていた主人公は 体を壊し亡くなってしまった。 それを哀れんだ神の手によって 主人公は異世界に転生することに 前世の失敗を繰り返さないように 今度は自由に楽しく生きていこうと 決める 主人公が転生した世界は 魔物が闊歩する世界! それを知った主人公は幼い頃から 努力し続け、剣と魔法を習得する! 初めての作品です! よろしくお願いします! 感想よろしくお願いします!

元チート大賢者の転生幼女物語

こずえ
ファンタジー
(※不定期更新なので、毎回忘れた頃に更新すると思います。) とある孤児院で私は暮らしていた。 ある日、いつものように孤児院の畑に水を撒き、孤児院の中で掃除をしていた。 そして、そんないつも通りの日々を過ごすはずだった私は目が覚めると前世の記憶を思い出していた。 「あれ?私って…」 そんな前世で最強だった小さな少女の気ままな冒険のお話である。

処理中です...