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第4話 神奈川県② みなとみらい、横浜中華街

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「とても美味しかったのじゃ! まさかあれほど美味しい食べ物があるとは思わなかったぞ!」

「あれがラーメンという食べ物で、日本各地にいろんなラーメンがあるんだよ。たぶん日本人の好きな食べ物ランキングのベスト5には入っていると思うよ」

 いわゆるご当地ラーメンというものは日本各地にたくさんある。家系ラーメンが食べられるのなら、他のラーメンも大丈夫そうか。

 少し怪しいのが、匂いの強い博多ラーメンと、醤油味が強い富山ブラックあたりか。そこら辺は本当に好みが分かれるんだよな。

「こっちの世界にはあんなに美味しい食べ物がいっぱいあるのじゃな……」

 ミルネさんの世界では食文化がそれほど進んでいないらしい。ラーメン屋に並んでいる時にいろいろと話を聞いたのだが、基本的には焼いたり煮たりするだけで、調味料も塩、コショウ、魚醤くらいしかないらしい。

 それがラーメンなんて手の込んだ美味しい料理を食べたら、ああなるのも無理はないか。おかわりをご所望であったが、このあともいろんなものを食べる予定だからな。

 ちなみに肉自体は向こうの世界でも美味しい肉がたくさんあるらしい。……この案内が終わったら、お中元でドラゴンの肉とかもらえないかな。

「それじゃあ場所を移動しようか」

「うむ、わかったのじゃ!」



 そして次にやってきたのはみなとみらいにある横浜赤レンガ倉庫である。2回目の転移魔法だったが、多少変な感覚はしたものの、体調は問題なさそうだ。

 ちなみに転移魔法には魔力というものを使うらしいのだが、1日に10回以上俺を連れての転移が可能らしい。めちゃくちゃ羨ましい……

 でも旅をする場合には道中の道のりがあるからこそだからな。旅の中で出会った人からその土地の話を聞いたり、一緒に酒を飲むのも楽しいものである。

「ここも人が多いのじゃ……」

「こっちのほうは完全に観光地だからね。それに横浜は観光地以外も人が多いから。あそこに見える大きなタワーが横浜ランドマークタワー、こっちに見える大きな丸いやつがよこはまコスモワールドにある大観覧車、そっちに見える大きな橋は横浜ベイブリッジだよ」

 みんなが横浜といえば思い浮かべるのがこの辺りの場所だろうな。横浜を象徴する名所がいくつもある。

「ほお~どれも大きいな! それに高いビルがいっぱいあるのじゃ! じゃがこの建物はそれほど綺麗ではないみたいじゃな……」

 そっか、赤レンガ倉庫はむしろ昔の建造物だからな。こちらの世界の人にとっては昔の建物って感じがするが、ミルネさんの世界の建物と同じようなものなのかもしれない。

「こっちの世界だと昔の建物になるからね。でも中は綺麗だよ」

 赤レンガ倉庫では横浜のお土産を買ったり、レストランで食事をしたり、スイーツを食べたり、冬はスケートリンクなんかもある。

 夜は横浜の夜景が綺麗だし、まさにカップル達のデートスポットだな。……ちっ、リア充はみんな爆発すればいいのに。

「タケミツ、今度はあっちのお店を見るのじゃ!」

「うん……」

 こんな可愛い女の子と一緒にデートスポットにいるのに、俺の場合はデートじゃないんだよな……そもそもこれだけ歳の離れた女の子とデートなんていったら通報案件である。こちらの世界ではそのあたりが厳しいのだよ。

 そのあとは赤レンガ倉庫から山下公園へと進み、そのまま横浜中華街へと進んでいく。



「ふむ、ここは先程の場所とだいぶ街並みが違うようじゃな!」

「このあたりは中華街と言って、中国という別の国の人達が集まってできた街だ。今ではその国の中華料理を食べられる場所になっているんだよ」

「面白いのう、ここの門もでっかいのじゃ!」

 最近では中華料理食べ放題の店とかもできているし、ランチなどをやっているお店も多いので手軽に楽しめるようになっている。もちろん昔からの高級店もあるぞ。

 あと元祖や本家の看板が多すぎて、どれが本当なのかわからないのも中華街あるあるだ。

「おお、いい匂いじゃのう! あれも美味しそうじゃ! あっ、あっちも美味しそうじゃ!」

「ちょっ! ミルネさん、人が多いからあまり走り回らないで!」

 あちこちから美味しそうな匂いがしているから気持ちはわかる。天津甘栗に小籠包、まんじゅう、焼売、北京ダックなどなど、屋台で売っている料理の匂いが漂っている。ここを通りつつ、何も買わないのは難しいよな。

「少し歩いて小腹も空いたし、何か食べようか? どれがいい?」

「う~む、これとそれと……あとあっちもじゃ!」

 最初は大人っぽい人かとも思ったが、こうして無邪気な顔で屋台の料理を回っているところを見ると、見た目通りの年齢なのかもしれないな。異世界は100歳を超える長命種族もいるらしい。

「あふっ! 熱いけれど、とっても美味しいのじゃ!」

 両手にいっぱいの料理を抱えながら、小籠包を頬張るミルネさん。少し歩いたとはいえ、ラーメンを食べたあとによく食べられるよ。

 しかしお金を気にしないで食べ歩きができるのって最高だな! 以前に食べられなかったフカヒレまんや角煮まんみたいな高いやつも今回は食べることができるのはありがたい。

「そっちの小籠包はかぶりつくとアツアツの肉汁が溢れ出すよね。スープをはふはふしながら食べると美味しいんだよね。それにこっちの角煮まんは、柔らかくてトロトロの肉に甘辛いタレが美味しいでしょ」

「うむ! 本当にどれも美味しいのじゃ! それにお店で買って、すぐにその場で食べられるのはいいのう!」

 ミルネさんはお姫様だからな。街のお店や屋台で食べ歩くことなんて今までなかったのだろう。こうやっていろんなお店を食べ歩くことができるのも中華街のいいところだ。
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