上 下
3 / 79
本編

3.新たな出会い①

しおりを挟む
 げんなりとした私が戻って来ると、そこには心配そうなシンシアと興味津々なメイシーが待っていた。


「それで、どうでしたの?」

「うん。やっぱりシンシアの言った通りだった」

「そうでしょう?」

「今教えてくれて、本当に助かったわ」



 私はシンシアに心から感謝していた。

 あのまま何も知らなかったら大恥をかくかもしれなかったのだから。



「だけど、ステファニーはそれで良かったの?」



 隣で話を聞いていたメイシーが訊ねてきた。

 彼女はウェイト伯爵のご令嬢で、学園に入ってからのお友だちだ。

 彼女の目は純粋な好奇心で満ちている。



「だってデニスって、見た目はあの通り調ってる美少年なのに、騎士科での実技はずーっと一番だって聞いたわよ? みんなあのギャップにキャーキャー言ってるじゃない?」

「まぁ、そうなんだけどね。幼なじみとしては『子供のころから変わらないなぁ』って感じで、婚約者ではあるんだけど……ときめきはしない、かなぁ?」

「ふーん。それなら、取られて悔しいとか、選ばれなくて悲しいとか、そういうのは無いのね?」



 私は改めて自分の心に問いかけてみるが、やっぱり嫉妬や妬む気持ちは一つも見つからず、ただ大きく頷いた。


「それじゃあステファニーは今、完全にフリーね?」



 メイシーが嬉しそうにニッコリと笑った。



「うーん。 今はそうだけど……すぐにおじい様が次の婚約者を見つけてくると思うわ。……っていうか、なんでそんなに嬉しそうなの?」

「えー! だって、ステファニーみたいな美人で性格良くて、何やっても卒なくこなせる人は絶対モテるのに、学園に入った時にはもう相手がいるだなんて、もったいないなぁって思ってたのよ」

「まーた。そんなにおだてて……」

おだててなんていないわ。ねぇ? シンシア?」

「そうですわ。ステファニーは私たちの自慢のお友だちなんですから、もっと自信を持ってくれなくては困ります」



 とりあえずの婚約者に捨てられた私を慰めてくれるとは……。

 そんなにショックでは無かったことは置いといて、友だちからのその気持ちは嬉しいわ。

 シンシアとメイシーがそばに居てくれて、私は本当に幸せね。




「でも、なんでデニスはステファニーのこと好きにならなかったのかしら?」



 メイシーが不思議そうに首を傾げ、何か発見したようにポンと手を打つ。



「あの人、ずーっと一緒だったから、ステファニーのありがたみが分からないのかも?」

「私でしたら、絶対ステファニーをお嫁にもらいますのに」



 シンシアの発言が怪しくなってきた。



「ありがとう。でもまあ、私はあの『自分のことしか考えなかったデニス』が人を好きになって、誰かの心を思いやれるようになるかと思うと、それだけで感慨深いわ」

「ステファニーったら……それ、親戚のおば様たちのセリフよ?」

「えぇー! 私これでもまだ十七歳の乙女なんですけど」



 ぷはっ!



 私たちはいっせいに吹き出して笑ったのだった。

しおりを挟む
1 / 5

この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!

25歳の伯爵令嬢、愛が重すぎる年下の婚約者に翻弄される

恋愛 / 完結 24h.ポイント:42pt お気に入り:2,847

従妹と親密な婚約者に、私は厳しく対処します。

恋愛 / 完結 24h.ポイント:759pt お気に入り:1,581

あなたが興味あるのは妹だけですよね?

恋愛 / 完結 24h.ポイント:319pt お気に入り:300

婚約者が結婚式の三日前に姿を消した

恋愛 / 完結 24h.ポイント:887pt お気に入り:89

趣味を極めて自由に生きろ! ただし、神々は愛し子に異世界改革をお望みです

ファンタジー / 連載中 24h.ポイント:27,151pt お気に入り:12,474

私が貴方の花嫁? お断りします!

恋愛 / 完結 24h.ポイント:1,902pt お気に入り:1,722

処理中です...